今、注目の「動画コマース」を「Qoo10」の事例からひも解く|エンターテイメント型「動画コマース」がもたらす 新たな価値とは
「TikTok売れ」。2021年に大きな話題を集めたこのキーワードは、マーケティングの在り方も進化させた。その要諦を最新のソリューションや事例を紹介するオンラインイベント「TikTok for Business #ForYou Summit 2022」の基調講演からひも解く。
マーケターが直面する課題はどのようにブランド関与を高めるか
『日経トレンディ』の「 2021年ヒット商品ベスト30」の第1位に選ばれた「TikTok売れ」。今やTikTokはマーケティングにおける重要なチャネルを担うようになった。
2022年4月27日、28日に開催されたオンラインイベントでは、「エンターテイメント型 動画コマースの幕開け」と題した基調講演を実施。オープンマーケットプレイス「Qoo10」を運営するeBay Japanのモラーノ絢香氏をゲストに迎え、TikTok for Business Japanの駒﨑誠一郎氏、日経クロストレンド/日経トレンディ発行人の杉本昭彦が語り合った。
駒﨑:今日は「エンターテイメント型 動画コマースの幕開け」というテーマでの鼎談ですが、本題に入る前に課題提起をさせてください。
私は広告主の皆様に「TikTok」のマーケティング活用のお手伝いをしていますが、あるマーケターとの会話で「まずブランドを知ってもらい、そして、その先の興味につなげることが重要」といった話が出ました。
相対的にユーザーとの接点の時間が限られている今、入り口の段階で認知だけにとどまらず、その先の関与をどう高めるかは、あらゆる業種における課題です。
杉本:その課題を上手く解決した事例を、私が発行人を務める「日経クロストレンド」で取り上げました。特集記事の「リブランディング 成功の方程式」です。
ある飲料メーカーが、飲食店向けブランドを小売り店で売り出すためのリブランディングを実施。生活者のインサイトを探ったところ、「ぬくもり」が求められているといった気づきがありました。そこで「ぬくもり」を起点にパッケージデザインやプロモーションの企画・開発を進めたところ大ヒット。コロナ禍で人との結びつきが疎遠になる中、「ぬくもり」で生活者の認識を変えて、購買に結びつけた事例です。
駒﨑:時代が求めている潜在的なニーズをキャッチして、それを取り入れたコミュニケーションによって関与を高める。それによって、商品を知ってもらうだけでなく、その先につなげた好例ですね。
続いて、急激な成長を遂げているオープンマーケットプレイス「Qoo10」を運営するeBay Japanのモラーノさんにお話を伺います。まずは自己紹介からお願いします。
モラーノ:eBay Japanは「Qoo10」事業とCBT事業を展開しており、私は「Qoo10」事業においてブランドマーケティングチームをリードしています。「Qoo10」は国内のECモールでは後発ですが、国内の市場平均を上回る年率約30%で成長中です。2023年に流通総額5000億円を目指しています。
「楽しみ」をバリューとする「Qoo10」がTikTokに期待することとは?
杉本:じつは先ほど紹介した『日経トレンディ』の「 2021年ヒット商品ベスト30」では、「格安越境EC」というキーワードが第12位に入り、その代表例が「Qoo10」でした。何がユーザーの心を掴んでいるとお考えですか。
モラーノ:「楽しさを仕掛け、喜びを届ける。」というコーポレートミッションこそ、ユーザーが求めているものだと考えます。商品を届けるだけでなく、選ぶ時間も楽しんで頂くことが、私たちがお届けしているバリューです。
駒﨑:確かに、「楽しさ」まで届けられていることが、お客様から支持されているポイントだと感じました。「TikTok」でも広告を配信されていますが、非常にワクワクするクリエイティブです。「TikTok」を活用した具体的な施策について教えて頂けますか。
モラーノ:2019年〜20年頃、「Qoo10」の認知は、現在ほど高くありませんでした。そこで、「Qoo10」という名前を何度も繰り返すクリエイティブや、お客様に参加してもらうハッシュタグチャレンジを実施しました。
「Qoo10」の認知が高まった2021年からは、具体的なサービスである「メガ割」の認知を高め、実際に利用してもらう施策を推進。「TikTok」のクリックレートは他の動画媒体よりも高いので、継続して取り組んでいます。
駒﨑:正直、「Qoo10」の効果データには驚いています。認知目的の広告でも、トラフィックまで生み出せる。つまり、ブランドを知るだけでなく、その先のアクションにつなげられるのは、「TikTok」の特徴のひとつです。他に「TikTok」のメリットをどうお感じになりましたか。
モラーノ:マーケティング効率の向上です。クリエイティブでは、Top Viewにモバイル視聴に適応した縦型動画を加えることで、お客様同士のコミュニケーションが活発化して質も向上。それに伴い、リーチ効率も改善しました。加えて、フィルターやスタンプといった表現方法を提供してもらうことで効率的にユニークユーザーにリーチし、信頼できる顧客データの収集につながりました。また、CPRの単価自体が向上したことも、大きな効果だと感じています。
※TikTok for Business Japan調べ
エンターテイメント性の介在がTikTokユーザーのコミュニティを生む
杉本:「TikTok」の特徴は、普通の人でも字幕やエフェクト、音楽といったリッチな表現を活用した動画を簡単に作成できること。ニューノーマルで人と離れていることもあり、情報発信で他人に認められたい欲求は高まっています。「TikTok」は発信欲求をエンパワーメントする場所であるからこそ多くの人が参加して、交流が生まれているのでしょう。
モラーノさんは、広告の配信やマーケティング活用する上で、「TikTok」と他媒体の違いをどう見ていますか。
モラーノ:従来のマーケティング、特にオンラインチャネルよりもお客様同士のつながりがある場所だと感じています。
※TikTok for Business Japan調べ
「TikTok」のすごいところは、お客様のお顔を実際に拝見できること。商品の使い方や実際に使ってみたときのエモーショナルさも伝わる表現方法が可能なのも「TikTok」ならではです。
駒﨑:ユーザーが自走するのも「TikTok」の強いポイントです。「メガ割」の広告直後からオーガニックの投稿が急増し、投稿された動画にも数百件単位でコメントがつきました。
モラーノ:「メガ割」のティザー期間には、コメント欄に「いつ始まるの」という期待感のある言葉があふれていました。他にも、どういった商品を買うかをお客様同士で語り合う「#メガ割会議」というハッシュタグが生まれたり、通常なら弊社に問い合わせが来るクーポンの使い方などもコメント欄内でお客様同士が教え合ったりしていました。広告なのに交流が非常に盛んでしたね。
駒﨑:コメント欄がひとつのコミュニティになっているわけですね。ブランドからの発信にユーザーが反応して、コミュニティが生まれる。コミュニティの投稿を見てユーザーが購入して、コミュニティにレビューを上げる。いわゆる、エコシステムが作られているのは、非常に印象的です。「メガ割」が一種のエンターテイメントとなり、ユーザー間で共有され、みんなで楽しむ状況ができていると感じました。
モラーノ:「メガ割」は2019年以降、お客様にご支援を頂いています。四半期に一度の割合で開催しているので、これからも、前回以上により良いものをそろえて、お届けできるように準備していきます。
ブランド関与を高めるTikTokの4つのポイント
杉本:市場調査やマーケティングも重要ですが、最も求められているのは、生活者や顧客を深く理解すること。昔なら「店頭に足を運べ」でした。同じ意味で、「TikTok」のコミュニティでユーザーが楽しむ様子を知るのは貴重なことです。ユーザーの体験を理解するには、「TikTok」は重要なツールだと思います。
最初に飲料メーカーのリブランディングの話をしましたが、ブランドをどう作っていくかは、マーケター共通の悩みです。その中で、「Qoo10」は、ユーザーと一緒に作るブランディングを実践しています。ユーザーは自分の心の中に「Qoo10」というブランドの認知・認識を作っていて、それを発信してくれるからこそ、別のユーザーにも響く。ある意味で、うらやましい状況です。
駒﨑:エンターテイメントを通じて、ブランドとユーザーが一緒に関係性を作り上げる。「Qoo10」の事例は非常に学びになりました。最後に、鼎談のポイントを4つにまとめてみました。
1点目、「TikTok」は、ブランドの新たな認知チャネルとして有効。
2点目、動画を生かしたエンターテイメントの活用は、認知だけでなく、その先の関与まで生み出していく。
3点目、認知施策で継続することで、ユーザーが動き出して、コミュニティが作られていく。彼らはブランドのサポーターとなり、購買を促していく。
4点目、数字のパフォーマンスも大事だが、その背景にどういったお客様の体験があるのか見極める。
今回の鼎談では、マーケターが参考にできる、さまざまな示唆があったと思います。貴重なお話をありがとうございました。
人気クリエイターが語るTikTokで響くコンテンツ作りのコツとは?
「TikTok利用実態&人気クリエイターが語るTikTokで響くコンテンツ作りのコツ」と題したセッションでは、TikTok for Business JapanのHarman Chan氏が最新の「TikTok」利用実態を紹介した後、「TikTok」クリエイターのしんのすけ氏、修一朗氏がゲストとして登場。「TikTok」の人気カテゴリー「ビューティー」「フード&ビバレッジ」「エンターテインメント」について、視聴者の心に刺さるコンテンツ作りのコツを語った。
「『ビューティー』系はインパクト作りを重要視しているので、パフォーマンスとしてのエンタメ性が大事」と指摘する修一朗氏によれば、「フード&ビバレッジ」のコンテンツ作りのコツは真逆だという。「何かにチャレンジするというよりも、視聴者が身近に感じられて共感できるものを作ろうと心がけています」。
映画紹介を中心に活動するしんのすけ氏は、「エンターテインメント」系の紹介コンテンツ作りの際に、常に3つのトレンドを意識すると語る。「社会のトレンド、ジャンルのトレンド、『TikTok』の中のトレンド、この3つのトレンドを1つのコンテンツの中にフックとして組み込むように気をつけています」。
「TikTok」のコンテンツといっても、カテゴリーが違えば、視聴者に響くコツも違うという着目すべきポイントが、人気クリエイターならではのリアルな視点から明らかになった。
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