TikTokで売上40倍に!LIVEでも3分で200個売れる。佐渡島でキムチをつくる親子に起きたこと
「18時前になったのでスタンバイしましょう!5、4、3、2、1――」
次の瞬間、通販サイトの『白菜キムチ』が「SOLD OUT」から「在庫あり」に変わりました。
すぐさまライブ配信中の画面には「買えた!」と喜ぶコメントが溢れます。
しかしあっという間に表示は「SOLD OUT」に。「え?もう売り切れたの?」これには視聴者も驚きを隠せません。
TikTokのライブストリーミング機能「TikTok LIVE」。このライブ配信を活用して週1回「キムチ争奪戦」が行われています。
この日、TikTok LIVE にて数量限定で販売を呼びかけた『白菜キムチ』200個(約30万円分)は、わずか3分で完売しました。
ライブ配信を活用したこの販売会を開催するのは、新潟県の佐渡島でキムチを製造している「キムチの家」の店主 硲 博巳(はざまひろみ)さん(以下、博巳さん)です。
※本記事は、TikTok Japan【公式】noteの掲載記事を転載(一部最新の情報に加筆修正)してご紹介します。
https://note.com/tiktok/n/n6e7763a1aa52
昨年、2021年12月にTikTokアカウントを開設した「キムチの家 佐渡島」(@kimuti.house.jp.ne.co)は、ダイナミックな包丁さばきで白菜を切りキムチをつくる動画が310万再生のヒットとなり、全国から通販に注文が殺到。TikTokを始めて2ヶ月で売上は40倍以上になりました。
そして現在はTikTok LIVE でもキムチの販売を呼びかけて、大きな成果を上げています。いったい、なにが起こっているのでしょう?
博巳さんにお話しを伺うと、店舗を営みながらTikTokに取り組む上でのポイントはもちろん、博巳さんとお母さんの親子に起こった大きな変化がありました。
目次
- キムチづくりが「コンプレックス」だった
- 母の味を伝えたい、「キムチの家」を継ぐ決心
- 諦めかけていたとき、TikTokで奇跡が
- TikTok売れで、注文が殺到!売上たった2ヶ月で4,000%アップ、40倍以上に!
- 3分間で200個が売れる!TikTok LIVEでキムチの販売会に挑戦!
- キムチができるまでの「ストーリー」を大切に届ける
- TikTokで、親子で夢に向かって前進
キムチづくりが「コンプレックス」だった
新潟県西部に位置する佐渡島。四季折々の自然の美しさが楽しめる海洋性の気候で、日本最大の金銀山「佐渡金山」があることでも有名です。
創業26年の「キムチの家」は、博巳さんのお母さんで韓国出身の硲あけみさんが、お父さんと結婚するため佐渡島に渡ってきたところから始まります。
当時、佐渡島ではキムチを食べる習慣がなく、あけみさんがつくる本場韓国のキムチは「辛いけど、うまい」と評判になり、島内全域のスーパーで販売される人気になりました。
博巳さんが物心ついた時から、家の敷地にある工場では朝5時からキムチをつくるお母さんの姿が。自然豊かな白菜などの野菜や佐渡産の魚を組み合わせ、保存料や添加物も一切つかわず秘伝のタレで漬けて自然発酵。
そうしてつくられたキムチを、家族みんなで手作業でパックに詰めてスーパーに卸しに行く。博巳さんはそんな家庭で育ちました。
硲家の食卓に並ぶ、色とりどりのキムチはどれも美味しくて「家のキムチは世界一うまい!」と思っていた博巳さん。しかし年齢が上がるにつれ、「周りと一緒じゃない」と感じてしまう出来事がありました。
「小学生の時、先輩から『キムチくさい』と、からかわれたんです。すごく哀しかったし、悔しかった。中学高校でも、同級生に『家がキムチ屋だ』と話すと、微妙な反応をされました」
当時、日本と韓国の政治的な関係もあり博巳さんは複雑な思いを抱えていました。周りと一緒じゃないことを恐れて、家がキムチ屋だということを隠すようになっていったといいます。
母の味を伝えたい、「キムチの家」を継ぐ決心
そうして高校を卒業して、博巳さんは東京の専門学校へと進みました。そこで出会った友達にお母さんがつくるキムチを食べてもらうと、すごく喜んでくれたといいます。
一人また一人と「美味しい」と言ってくれるたび、博巳さんはあることに気づきました。
「佐渡島にいた頃から、たくさんの人に、家のキムチを食べてもらいたかったんです。それを封じ込めていたのは周りからの視線でした」
「でも母の味が、これだけ人に喜んでもらえるのだと知り、迷いがなくなった。キムチを広げることを、やっていいんだ!発信していいんだ!と自信につながったんです」
母の味をこれからも伝えていきたい——。博巳さんは「キムチの家」を継ぐことを決心します。
それを東京で出会った恩師に伝えると「まず店を知ってもらうことに注力した方がいい」とアドバイスをもらいました。
そこで2019年に通販事業を立ち上げて全国から購入できる体制を整え、2021年3月、佐渡島へと帰郷。
お母さんの下でキムチづくりの修業に励むかたわら「キムチの家」を全国に広げるためSNSで発信をはじめます。
諦めかけていたとき、TikTokで奇跡が
しかし1年間、SNSで「キムチの家」の投稿を続けても認知拡大につながる兆しは一向に見えてきません。
「どんなに頑張ってもフォロワーも増えない。地道にやっていくしかないと自分に言い聞かせるも、内心は諦めていました」
途方に暮れていた時、ながめていたTikTok。そこで目にしたのがグルメ系TikTokクリエイター「バヤシさん」(@bayashi.tiktok) の動画でした。
「バヤシさんが、超カッコよく料理をするんです。すげえと感動してキムチの家で出来ないかな?と考えました」
そこでバヤシさんの動画を参考に、キムチをつくるときに白菜を豪快にカットするお母さんのダイナミックな包丁さばきと、食欲をそそる調理音を捉えたASMRをテンポ感よく収めます。
そして2021年12月17日にTikTokに初投稿すると思いもよらない現象が起こったのです。
@kimuti.house.jp.ne.co 1996年創業。まだ佐渡島にキムチがなかった頃に自分で食べたくて作りました。
「投稿した次の日に、ものすごい数の『いいね』と『コメント』がきて、フォロワーも一気に増えていた。やばい、なんかきたぞ!とびっくりしました」その動画は310万回以上再生され、10万件の「いいね」の人気に。
それ以上に大変なことになっていたのが「キムチの家」の通販サイト。全国から注文が殺到して、飛ぶようにキムチが売れていったのです。
TikTok売れで、注文が殺到!売上たった2ヶ月で4,000%アップ、40倍以上に!
「母からは、こんな騒ぎを起こしやがって!と怒られました(笑)」と博巳さんは、1月を振り返ります。
TikTokを開始する前の、月間の通販売上は初年度15,000円、直近年度でも32,000円(いずれも月の平均)ほどでした。
それがTikTokをきっかけに注文が殺到した2021年12月は、15日間で売上40万円となり、翌月2022年1月には130万円以上にまで跳ね上がったのです。
たった2ヶ月で、売上は4,000%アップ、40倍以上に。「キムチの家」で販売されるキムチは1パックが約500~1,500円、平均単価は約2,800円だといいます。2022年1月は単純計算でも460人以上が、TikTokを観てキムチを購入したことになります。
注文は北海道から沖縄まで全国から届き、年齢層は20~30代がメイン。ある傾向から10代の購入も多いと感じたそうです。
「10代は、カード決済などの都合から自分で購入できないため『子どもに頼まれて購入しました』とメッセージをくれる親御さんが、すごく多かったです」
このようなコミュニケーションから、みえてきたお客様の姿。博巳さんは、集中する注文でお客様への対応が疎かにならないよう気を引き締めました。
しかし完全に手づくりのため生産できる数には限りが出てしまいます。どのようにしたら、作り手であるお母さんがつくりやすく、お客様も買いやすいだろうか?その仕組みを整えることを考えていたといいます。
3分間で200個が売れる!TikTok LIVEでキムチの販売会に挑戦!
そのひとつが冒頭でも紹介したTikTok LIVE を活用した販売会でした。
実はライバーとしても活動の経験を持つ博巳さん。TikTokを始める以前からライバーやクリエイターの創出を目的に合同会社LVC.という会社を仲間と設立していました。
「ライブ配信を通じて、モノを売ること」を、そのメンバーと試行錯誤する中、販売会という配信スタイルにたどり着きます。
2022年1月12日、注文殺到で完売となってしまっていたキムチでしたが数量限定で販売できることになりました。そこでTikTok LIVEを活用して販売再開を記念するライブ配信を初開催。すると一日で26万円(約200個)の売上となり、大きな手応えを感じたといいます。
「いまは1回のライブ配信で、キムチ200個(30万円分)を追加します。最初は完売まで10分だったスピードが、回を重ねるごとに早くなり、最終的には3分になりました。まったく想定していなかったことで、本当に驚いています」
視聴者も“参加者”として楽しめる「キムチ争奪戦」。しかし配信中ずっと宣伝をするのではありません。
配信には、博巳さんと、補佐役として博巳さんの彼女さんも登場。キムチのレシピや知識について視聴者とコミュニケーションを楽しみます。
たとえば「ネギキムチは買えませんか?」という質問には、「ネギは、この時期に収穫しても旨みがでないから、お母さんがつくりたがらないんだ」と、その理由とお母さんの想いも伝えます。
彼女さんがキッチンで料理をすることもあります。美味しい料理とキムチを囲んで、一緒に晩御飯を食べる。そんな自然体な配信が視聴者の心を掴んでいます。
キムチができるまでの「ストーリー」を大切に届ける
投稿する動画も立て続けに人気となっている「キムチの家」。博巳さんがキムチを知ってもらう上で大切にしているのは、キムチができるまでの「ストーリー」を届けることだと話します。
「白菜やネギが調理される工程はもちろん、ダイナミックに白菜をぶった切るお母さんの包丁づかいなど衝撃的な瞬間や、キムチを漬けているときに旨そうだなと感じた瞬間など、出来上がりまで一緒に観てもらえるように、そのまま届けることを意識しています」
また博巳さんは、お母さんの尖っている人間性や行動にも注目。たとえばタケノコを差し出してあっという間に美味しいキムチに変えてしまうスゴ技を紹介した動画は、公開から1日で200万回再生される人気になっています。
@kimuti.house.jp.ne.co
動画を撮影する上では、TikTokクリエイター「あああつしさん」(@aaa_tsushi_)の映像の撮り方などを参考に、スマホのカメラをアクティブに動かして「動きをつける映像」にも挑戦。さらに常に最新のTikTokトレンドも把握して、アンテナを張って動画のアイデアを考えているといいます。
また最近では、お母さんが視聴者の質問に応えたり、購入者の手紙をお父さんが読んで伝えたり、硲さん一家が登場する動画も多く投稿されるようになりました。
そこには博巳さんのこんな想いが在りました。
「ものから人へファンをふやす——キムチの美味しさを伝えながら、つくっているお母さんや硲家のファンになってもらって、信頼してキムチを買ってもらいたいと思っています」
こうして今では硲さん一家の動画にも多くのコメントが寄せられるようになりました。博巳さんは、年内までに「キムチの家」10万フォロワーを目標として動画投稿を続けていきたいと意気込みます。
TikTokで、親子で夢に向かって前進
「キムチの家がTikTokで人気になったことで、佐渡島にも興味を持ってもらえるようになりました。みんなが遊びに来れるように『佐渡の家』というのもつくりたいです」
博巳さんは、ずっと佐渡島のことも発信したいと考えていたといいます。TikTokを使った情報発信なら実現できるかもしれないと、希望が見えてきました。そしてお母さんの夢も実現できるかもしれないといいます。
「僕が母に『キムチの家を継ぐ』と話したとき、自分は焼肉屋をやりたいんだと、夢を話してくれました。僕に期待してくれたのかもしれません。TikTokでたくさんの人に『キムチの家』を知ってもらえたおかげで、工場の敷地にあるスペースを焼肉屋に改装できないか?といったように、より前向きに、母の夢の実現に向けて考えられるようになりました」
キムチづくりを通じて博巳さんとお母さんがお互いに夢を持ち、それを一緒に実現しています。
TikTokで売上はもちろん、よりお互いの夢に近づくことができた。それこそが硲さん親子に起こった大きな変化でした。
いま博巳さんは、ふるさとである佐渡島から、母の味を届けることに誇りと自信を持っています。
「地元の友達からTikTokで観たよ!すごいね!と言われたり、全然、連絡をとっていなかった友達からキムチを買いたいと連絡がきたり、みんなTikTokを観てくれているみたいです」
博巳さんは、もし同じように店舗をSNSで知ってもらいたいと考えている方が居たら、すぐにTikTokを始めて欲しいと言います。
「うまくできるかなとか、どうやればいいんだろうとか、そんなことを言っている場合じゃないぐらいのことが起こっています。すぐにTikTokをダウンロードして動画を撮り始めて欲しい。分からなかったら僕が教えたい」
「TikTokは可能性がめちゃくちゃ広がっていて、これからもっと大きくなると感じています」
店舗情報 新潟県佐渡市新穂長畝2763
クリエイタープロフィール 硲 博巳(はざま ひろみ) こころが揺れ動く楽しい事が大好き!座右の銘は「ひらめき」と「愛」。 東京でライブ配信者として活動しながら2019年に家業のキムチの販売を行う通販事業を立ち上げ。2021年3月佐渡島へと帰郷し、8月にライバーやクリエイターのマネジメント会社合同会社LVCを創業。キムチ造りを学ぶ傍ら、同年12月に立ち上げたTikTokアカウント「キムチの家」で自ら動画投稿やライブ配信を行った所、キムチが爆売れする「TikTok売れ」現象に。 今後の展望はキムチの家の延長にネットショップ、リアルショップ問わず全国に佐渡の家、〇〇の家など「家」シリーズを展開する事、そしてLVC.から自分に続く「TikTokでの新しい人気者やクリエイター」創出する事。 |
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