TikTok広告3つの成功事例に見る「クリエイターとブランドの信頼」:HAKUHODO DX_UNITED横山昴氏、TikTok for Business Japan赤松義隆氏、駒井優樹氏

2022-12-22

クリエイターたちによって日々投稿される創造性溢れるクリエイティブが、TikTokに独自の経済圏を生みだそうとしている。

TikTok売れ」がヒット商品のキーワードになるなど、TikTokを経由した消費活動が活発に行われ、ブランドにとってもマーケティングを行う上で無視できない存在となっている。しかし、従来とは異なるフォーマットを持ち、トレンドやニーズの変化のスピードも早い。消費者の変化を受け対応策に走るものの、この新しいプラットフォームを前に、決定打を見つけられずにいるブランドは少なくないだろう。

こうした状況を受け、TikTokにおける最適な広告クリエイティブの実現を目的に、HAKUHODO DX_UNITEDの動画に特化した運用型クリエイティブのエキスパートチーム「Quick Movie」とTikTok for Business Japanがタッグを組んで立ち上げたのが、TikTokに特化したクリエイティブチーム「TiQuick」だ。

※企業のDXをマーケティングDXとメディアDXの両輪で統合的に推進する博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムの3社横断戦略組織

エージェンシーのクリエイターとプラットフォームが会社の枠を超えてひとつのチームを立ち上げるというのは珍しいが、そこにうかがえるのはTikTok広告にかける「本気度」だ。

TiQuickを率いるHAKUHODO DX_UNITEDの横山昴氏はチーム立ち上げの背景について、「TikTokは、もはや『手の中のマスメディア』と言えるかもしれない。デジタルのレコメンドシステムが進化しパーソナライズ化が進み、『世の中の共通認識』が作りづらくなった時代において、新しく独自性の高い存在だった」という。

「ユーザー主導のプラットフォームという印象が強く、ユーザーが急増していく一方で、新しい存在だったからこそ、どのようにクライアントのブランド成長に活用するか、社内外の現場が悩んでいた。そこで、クイックにモデルケースを生み出し業界をリードするべく、TikTokに適したクリエイティブチームを作り、ナレッジをためていく必要を感じた」と振り返る。

20213月のチーム発足から1年半が経った今、TiQuickはどのような強みを発揮し、最適解を生み出しているのか? チームが社内外にもたらした効果や、その強みを生かしたTikTok広告の取り組み、TiQuickが重要視するTikTokクリエイターとの関係構築などについて、横山氏と、TikTok for Business Japanの赤松義隆氏、駒井優樹氏に話を聞いた。

 

※このインタビューはDIGIDAYにて2022年12月13日に広告掲載したものです。

TikTok広告3つの成功事例に見る「クリエイターとブランドの信頼」:HAKUHODO DX_UNITED横山昴氏、TikTok for Business Japan赤松義隆氏、駒井優樹氏

−−TiQuickというチームを立ち上げた経緯を教えてください。

横山昴(以下、横山):私が社内でQuick Movieを立ち上げたのが4年前です。そこでは、主要デジタルプラットフォームを徹底的にハックし、その環境で受け入れられやすい形にクリエイティブをアジャストしていく、ということをやっていました。

常に先進的な成功事例を生み出し業界をリードしていくことを目標にしていたので、TikTokが登場してすぐTikTok for Business Japanに訪問し、フィード面に適したクリエイティブについての議論を始めました。チームをつくりナレッジをためていきたい。そう考え、社内を説得しTiQuickを立ち上げたのは、それからちょうど3カ月後のことでしたね。

横山 /デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC) 博報堂デジタルイニシアティブ プロセス&クリエイティブデザイン本部 クリエイティブ推進局 第一Quick Movie推進部マネージャー 兼 株式会社博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局。2012年出版社に入社後、マーケティングリサーチ会社、フリーランスを経て、2018年博報堂DYデジタル(現DAC)に入社し、2022年より現職。さまざまなプラットフォームと連携しながら、動画に特化したクリエイティブを開発する「Quick Movie」チームを立ち上げる。今年10月にはTikTokマーケティングパートナーの日本初のクリエイティブバッチを取得。

 

−−別々の会社で、ひとつのプラットフォームに特化したクリエイティブチームをつくるのは珍しいと思いますが、チームにした理由とメリットは、どのようなところにあるのでしょう?

赤松義隆(以下、赤松)TikTokは、ショートムービーにフォーカスしたフォーマットのプラットフォームです。このような新しいプラットフォームに対しては、クライアントも、どのようなクリエイティブがふさわしいのか、わからない部分も多々あります。プラットフォーム側の人間としては、そのような広告主の不安には迅速に対応しなければいけません。クリエイターとプラットフォームがひとつのチームになっていれば、アイディアの蓄積やスピード感のある情報交換ができるので、クライアントにとって大きなメリットになります。

横山:そもそも両社がバラバラに動き、同じクライアントで「お見合い」が起こったままでは、サービスを提供しようとしても、うまく機能しなかったり、頓挫してしまうこともありえます。チームとしてひとつになって、毎週ミーティングを行い、プラットフォームであるTikTok for Businessと、私たちエージェンシーのクリエイターが常にフラットな状況で意見交換する場をつくることができたのは、よりよいプラットフォームを育て、よりよいクリエイティブを届ける第一歩になっていると思います。

 

−−毎週のミーテイングでは、どのようなことがテーマになるのですか?

赤松:我々はTikTokを「エンターテイメントプラットフォーム」と呼んでいるのですが、そこでは日々、新しいトレンドが生まれています。そのトレンドに、いかに早い段階でキャッチアップしていけるかが、成功するクリエイティブのために重要なポイントです。そのような情報をTiQuickで共有しています。

もうひとつミーティングで行っているのが、マーケティングにおけるTikTokの価値を言語化するためのディスカッションです。TikTokは、単なる面白い短尺動画のプラットフォームではないことをクライアントに理解してもらうためには、何をどう伝えたらいいのか、毎週議論しています。

赤松 義隆Global Business Solutions Director, TikTok for Business Japan2004年に博報堂に入社、化粧品、通信キャリアのアカウントディレクターを経て、メディアプロデューサーとしてデジタルプラットフォーマーと協働でビジネスフレームワークの開発などを推進。2021年にTikTok for Businessへ入社し、現職では広告事業におけるビジネスディベロップメントがミッション。

 

−−チーム内での役割分担は、Quick Movieがクリエイティブを担当して、TikTok for Businessがエージェンシーやクライアントへの対応をするということでしょうか?

横山:基本的にはそうですが、私は社内ではふたつの顔を持っています。ひとつは、デジタルのクリエイティブ全体を見ていくデジタルクリエイティブディレクターという顔。もうひとつは、TiQuickの運営やTikTok広告についてのセミナーを開催したり、クリエイティブの目線から売り込みのお手伝いをする、営業としての顔です。

駒井優樹(以下、駒井):横山さんには、クリエイティブ起点での営業拡大に協力してもらっています。TikTokはこれまでにない形の動画プラットフォームということもあって、クリエイティブの準備ができないから出稿は難しいというクライアントも多くいらっしゃいます。そのような場合でも、チーム内にクリエイターがいることで、新規顧客獲得の機会もつくれます。

 

−−TiQuickの強みであるクリエイティブを、クライアントにも理解してもらいやすくなるのですね。

駒井:そうですね。私はやはり、TiQuickが企画から制作まで一気通貫で対応できるという点が、メリットとして大きいと思っています。たとえばプランニングの際、我々はデータを持っているのでクライアントに対して統計的な話をすることはできます。しかし、制作の実働部隊がないので、実体験を踏まえた話や、あるいはデータに基づいてどのようなクリエイティブにしたらよいか、具体的なイメージまで落とし込むためには、TiQuickとして協業することが必須と考えています。

駒井優樹Global Business Solutions Manager, TikTok for Business Japan2015年に専業代理店に入社、入社後2年で関西エリアの担当へ異動。 2019年にTikTok for Businessに入社。前職での経験を元に関西圏のクライアントを担当。同時にパフォーマンス広告が中心の専業代理店チームをリード。2022年に現チームに異動し、総合代理店の担当として広告事業におけるビジネスディベロップメントに従事。

 

−−TiQuickが発足して1年半ということですが、具体的にはどのような事例があるのでしょうか?

横山:いろいろありますが……まず、ソニー・インタラクティブエンタテインメント様の例を紹介しましょう。アーティストでありTikTokクリエイターでもあるあのちゃんがCMソングを歌っているプレイステーション®TVCMTikTokで活用したという事例です。もちろん、TVCMをそのままTikTokで流しても一定の効果はありますが、さらに効果を最大限にするために、あのちゃんが歌っている様子とCMをかけ合わせたTikTokライクなクリエイティブにしようと考えました。その結果できたのが、あのちゃんが最初に「このCM、ぼくが歌ってるの知ってた?」と呼びかけて、TVCMが流れている間、あのちゃんにはリップシンクをしてもらい、最後に「コメントよろしゅう!」とまとめるというものです。ここまでが大体30秒です。この動画は1クリエイトで4000時間くらいの可処分時間獲得という非常に高いパフォーマンスが出ました。この事例のポイントのひとつが、あのちゃんというクリエイターとTVCMが共存する形でクリエイティブをつくることができた結果、新しい価値がTikTok上で生み出されたということです。

あのちゃんが歌っている様子とTVCMをかけ合わせた
ソニー・インタラクティブエンタテインメントの事例

 

もうひとつが、花王様の事例です。こちらはZ世代を中心に話題を拡散していきたい商品で、どの媒体もTikTokを起点とした縦長のクリエイティブにしようと、ほかのプラットフォームや屋外広告向けの写真や動画も、一括して撮影しました。この事例でのポイントは、この広告に出演するTikTokクリエイターの女性たちと、どうしたらTikTokで成功するかを撮影現場で直接議論しながら、クリエイティブを作っていったということです。ちょっとした動きを加えたり、アクションを変えてみたり、TikTokクリエイターの意見を聞きながらクリエイティブをつくるというのは、クライアントにとっては新しい取り組みでしたが、売上に直結する成果も出せ、非常に高い評価をいただきました。

花王エッセンシャル ザ ビューティの事例

 

そして、クラシエ様の場合は、Z世代向けの新商品「NUAN」という美容液クリームで5組のTikTokクリエイターと「共創マーケティング」にチャレンジしました。クリエイターとクライアントの間で数回に渡り会議を設け、そのなかでクリエイティブを作っていくことで彼女たちのブランドへの「信頼」が高まり、アウトプットもより自然なものになっていきました。

かなりチャレンジングな企画ではありましたが、クライアントもTikTokという新しいプラットフォームに積極的に取り組もうというマインドをお持ちなので、クリエイターとのセッションを楽しんでおりました。「情報の取得方法」や「最近買ったコスメ」についてなどリアルな質問が飛び交い、Z世代への理解も深まったようです。

その結果、クリエイター投稿のすべてが想定の3倍以上のリーチを実現することができました。クリエイターがパフォーマンスを発揮できる環境づくりをすることも、実は我々代理店の新しい役割だったりします。

クラシエ「NUAN」の事例。左から、実熊瑠琉(@kuma_99/通称:るるたい)さん白間太陽(@taiyo_shiroma /通称:るるたい)さんひよん(@feeyong34)さんによる投稿

 

TikTokのクリエイティブの一番のポイントは「信頼」だと思います。

 

−−これらの事例に共通していることとして、TiQuickは、「TikTokクリエイター」との取り組みを重視していると感じます。

赤松:おっしゃる通り、TikTokユーザーが発信した情報をコンテンツとして集約したものはUGC(User Generated Contents)と呼ばれますが、TiQuickの生み出すクリエイティブは、UGCではありません。我々は、TikTokクリエイターとつくりあげていくものを、CGC(Creator Generated Contents)という概念で捉えています。

駒井:UGCは、ユーザーが商品情報、たとえばレビューや商品紹介、開封動画などを発信してTikTokを楽しむものです。オーガニックな投稿なので、どんなに面白いものであっても我々がハンドリングできないし、どこでバズが起きるか、良い意味で予測不能です。それとは違ってCGCの場合は、広告主が伝えたい情報を主軸にして動画を作るなど、情報の伝え方や仕掛けを我々がある程度コントロールできます。認知から購買まで、ある程度計算して結びつけられるのがCGCの大きな特徴だと思います。

横山:UGCとCGCのどちらも生活者寄りの発信なんですが、その企業の思いをより一層乗せながらクリエイターが語るのがCGCという位置づけですね。

赤松:ただ、それぞれのクリエイターが持っている表現方法や世界観は、しっかりキープするべきで、そこはクライアントにも極力、ご理解をいただく必要があると思います。もちろん広告なのである程度のコントロールはしなくてはいけませんが、パフォーマンスを出すことに関しては、どちらかというとクリエイターの表現方法に任せてしまうほうがよいと思います。本来のクリエイターらしくない、広告らしすぎる表現は、ユーザーからまったく受け入れられない可能性もあるのです。クリエイターと広告主にとっていい塩梅の中間地点を探すことが、非常に重要です。

 

−−クリエイターの重要性がよくわかります。では今後、TiQuickを通じて、どのようなことを進めていきたいと考えていますか?

赤松:TikTokが、リアルでユニークさに溢れ、日々さまざまなトレンドが生まれる「エンターテイメントプラットフォーム」だという点は今後も変わりません。ユーザーの皆さんに、そうしたプラットフォームとして楽しんでいただけるものであり続けることが、マーケティングとしての価値を高めていくと思っているので、やはり、ユーザーにとってより価値のあるもの、より意味のあるものであることが重要です。それが最終的には、ブランドの皆さんに活用していただけるようなプラットフォームになると考えています。

駒井:TiQuickを通じて博報堂DYグループという心強いパートナーとタッグを組めたことも後押しし、TikTokは広告においてもマス的な立ち位置を確立しつつあります。特にアッパーファネルにおいて、ブランドから選んでいただける機会も増え、効果的な成果も見えてきました。TikTok広告はフルファネルで活用いただけるのが強みですから、これを弾みに、ミッドファネルからローワーファネルにおける事例も増やしていきたいと考えています。クリエイティブを軸に、横山さんたちと少しでも多くの成功事例を作っていきたいです。

横山:私はTiQuickで今後やりたいことが2つあります。ひとつは「クリエイターエコノミー」をもっとブランド成長に導入していき、自然に口コミが発生していく仕組み「エコシステム」形成の確度を高めていくこと。わかりやすく言えば「TikTok売れ」の一歩手前「TikTok好き」を増やす。

これからは、いま以上に個々人がパワーを持っていく時代。Z世代が将来になりたい職業の1位って何だか知ってますか? 実は「インフルエンサー」(memedays Z世代の将来に関する意識調査より)なんですが、そうなっているきっかけのひとつは、やはりTikTokだと思います。

次世代のクリエイティブディレクションは、TikTokクリエイターとの「共創マーケティング」がキーとなってくるのですが、彼女たちの「型」がパフォーマンスにつながるからといって頼り切るのではなく、一緒に愛されるメッセージの届け方を見つけていくこと。そのためにはまず、多くのTikTokクリエイターと会話の機会を作り、ブランドとの相性を見極めたいですね。

もうひとつは、TikTokクリエイターをプロのマーケターにするための取り組みです。すでに博報堂のクリエイターと共創し商品開発をする、といったことはしていますが、今以上にプロジェクトに入ってきてもらおうと思います。さらに今、複数プラットフォームを感覚で使い分けているTikTokクリエイターたちを、TikTokの枠を越えて「プラットフォーム横断クリエイター」として立ってもらうことで、さらにTikTokの魅力を引き出してもらう。

 

−−これから先、TikTokは、企業にとってさらに重要なプラットフォームになっていくと思います。TikTokでの取り組みを考えている企業は、クリエイターとの関係でどのような点に注意するべきでしょう?

横山:まずTikTokクリエイターとの取り組みをこれまでのインフルエンサーマーケティングの延長線上と考えないようにすること。「代弁者」ではなく「体現者」として接することです。彼女たちはユーザーにとってより身近な存在、たとえるなら「クラスの人気者」。彼らを「プロジェクトマネージャー」として中心に立たせてブランドコミュニティをつくり、それを通じて、企業が自分たちのファンを持つようにする。WEB3.0的な考え方へとつなげていく一歩です。さらに、企業はそのコミュニティを活発化させ、意見を吸い上げ商品開発に生かしていくことでLTVをあげていく。そんなことを実現したいと思っています。

赤松:クリエイターとそのような関係性を構築し、ファン獲得をクリエイティブで実現するのが、TiQuickということです。実は、TiQuickを構成するHAKUHODO DX_UNITEDQuick Movieは日本企業で初めて、TikTokマーケティングパートナーの認定クリエイティブバッジを取得しました。TikTokがグローバル規模で、TikTokを熟知したQuick Movie、引いてはTiQuickの価値と重要性を認めたということです。

横山:そこは、我々が前面に押し出していきたいところですね(笑)。実はこのバッジは単なる名誉ではなく、ビジネスの点でも非常に優位性があります。たとえば認定パートナーは、「TikTok Smart Tag」という新たなクリエイティブ管理ツールを使うことができ、あるクリエイティブにどのような反応があったのか、クリエイティブの分析やキャンペーン管理をより詳細に把握することが可能になります。そのデータをクリエイティブに反映することで、より精度高く興味を引き行動へと繋げることができる。データに基づいたクリエイティブが常識である現在、これは、広告主の課題解決に、非常に大きなポイントになるはずです。

単なるショート動画プラットフォームを越えた「新しい時代の顧客体験」が、TikTokにはあります。そこにはクリエイターとブランドの信頼が生むクリエイティビティが不可欠なのです。

 

Written by DIGIDAY Brand STUDIO(滝口雅志)
Photo by 渡部幸和

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