【ヒットの法則】サントリーが実践する、TikTok を使った仕掛けとは | 【公式】TikTok for Business: TikTok広告

【ヒットの法則】サントリーが実践する、TikTok を使った仕掛けとは

2023-04-12

TikTok発のヒット商品が続々と生まれている。

企業のマーケティングにおいてTikTokの影響力はもはや無視できるものではなく、各社が「TikTok売れ」の方程式を生み出すべく試行錯誤するなか、2022年11月にTikTokで話題をさらったのが、サントリーの新商品「ビアボール」だ。

人気TikTokクリエイター6名が「ビアボール」の楽しみ方を紹介するWeb動画を投稿したのを皮切りに、「#ビアボール」のタグがついた動画が一気に拡散。再生回数は動画公開から3カ月で8600万回を超えた。

この「ビアボール」の話題化はどのように生み出されたのか。そして、TikTokの特性をフル活用するサントリーのデジタル戦略とは。

サントリーホールディングス宣伝部 前田真太郎氏TikTok for Business Japan 村田有彩氏が、「TikTokを使い倒すコツ」について語り合った。

 

※この記事はNewsPicksにて2023年4月4日に広告掲載したものです。

【ヒットの法則】サントリーが実践する、TikTok を使った仕掛けとは

前田真太郎
サントリーホールディングス株式会社 宣伝部 課長
2007年に総合広告代理店に入社。流通・飲料・自動車・外食・金融・ゲーム等のクライアントのメディア・デジタルプランニング担当を経て、2016年にサントリーに入社。デジタルのコンテンツプロデュースやメディアプランニングの担当として、サントリー公式Vtuber「燦鳥ノム」の開発や、日本初のTikTokクリエイティブコンテストの実施をはじめ、多数のデジタル施策を手掛ける。2021年より現職。

村田有彩
TikTok for Business, Client Partner, Brand Partnership Sales, Global Business Solutions, Japan
2018年ゲーム/広告事業を行うIT企業に入社、コスメ/消費財領域でのデジタルプロモーションの企画営業を担当、その後SNS運用における新規事業立ち上げを経験し、2020年TikTok for Businessに転職。現在は飲料/コンビニ領域のClientPartnerとして従事、TikTokでのメディアプラニングから企画設計、クリエイティブサポートなどを務める。

「ビアボーラーズ」はこうして誕生した

──2022年11月の発売直後から「ビアボール」はTikTokで話題になりました。TikTokでプロモーション展開をした背景を教えてください。

前田 年々TikTokのパワーは増していて、2021年頃からは購買行動につながる「TikTok売れ」現象が自然発生的に起こるようになりました。しかし、未だ企業が「TikTok売れ」を狙って生み出せるケースは少ないのが現状です。

そんななか、プロモーションの観点で「再現性を持ってTikTok売れを実現できないか」と考え、 TikTokと相性の良い商品を探していた際に、昨年11月に「ビアボール」という商品を発売することになり、「これだ」と。

「ビアボール」は炭酸でつくる自由に度数や味を変えられる新しいビールです。今までのビールのように完成した商品を提供するのではなく、「つくる工程」も含めて楽しんでもらいたい。

特にビアボールはMZ世代(※1)をターゲットにしている商品ということもあり、今までとは違う新しいコミュニケーションに挑戦してみようと、TikTokで仕掛けることにしたのです。

※1 1980年代半ば〜1990年代初頭生まれの「ミレニアル世代」と、1990年代後半〜2010年の間に生まれた「Z世代」の2つを合わせた造語。

 

──そして生まれたのが、人気TikTokクリエイター6名をアンバサダーにした「ビアボーラーズ」企画だったと。

前田 TikTokでプロモーションを展開する方法はこれまでもいくつかありました。自社で広告動画をつくって配信する、TikTokクリエイターに依頼して動画をつくってもらう、など。

しかし、「TikTok売れ」の再現性を持たせるという点から、これまでの方法とは一線を画したプロモーションを実施したいと考えました。そこで辿り着いたのが、「ビアボーラーズ」企画です。

「TikTokといえば、この人だよね」という人気クリエイター6名を起用して「ビアボーラーズ」と命名し、彼らが一堂に会して「ビアボール」を楽しんでいるWeb動画「ビアボーラーズ大集合編」を作成。各クリエイターに自分なりの「ビアボール」の楽しみ方を動画で紹介してもらうという企画でした。

超メジャーなクリエイターを複数名集めて動画を出すという方法をTikTokでやっている企業はまだありません。これなら、TikTokでのプロモーション展開を1つ上のステージに押し上げ、「今のTikTokの真ん中に行ける企画になる」と考えました。

村田 「ビアボーラーズ大集合編」は「アベンジャーズ」のようなオールスター感があって斬新でした。

ユーザーにとっても、クリエイター同士のコラボレーションを見る機会はあまりないですし、1本の動画の中に絶大な人気を誇っている方々が集まっているという点で、すごく注目度の高いコンテンツになりました。

加えてWeb動画公開後、ビアボールのTikTokアカウントで、ビアボーラーズのみなさんのそれぞれの楽しみ方を動画にしていただいたことで、「#ビアボール」のタグがついた動画は一気に広まり、再生回数は3カ月で8600万回を超えるなど、広くリーチすることができました。

サントリー「ビアボール」の公式TikTokアカウント。ビアボール大集合編に登場した人気クリエイターが、それぞれのやり方でビアボールを楽しむ様子を動画で公開した。

 

今回、TikTokの中で「ビアボール」の話題化が進んだのは、ユーザーが自発的に行動したくなる伝え方をしていたことがポイントです。

「この商品、おいしいよ」と商品の魅力を訴求するだけでなく、「飲んでみたい」「楽しんでみたい」「私ならこう飲む」など、アレンジを含めて「私もやってみたい」と思えるコンテンツになっていたことで、ユーザーに受け入れられやすくなったのだと思います。

クリエイターに楽しみ方を“委ねる”

──TikTokに投稿された個別の動画では、クリエイターへ事前に「こういう方向で動画をつくってほしい」と伝えていたのでしょうか?

前田 「ビアボール」はいろいろな飲み方があるので、それをどう表現するかも自由。なので、基本的にはクリエイターの普段のスタイルに沿って動画をつくってもらいました。

村田 クリエイターの中には読み上げ機能を使っている方やユーザーの質問に答えるかたちで構成をつくっている方もいて、自身のスタイルを組み込みながら、ユーザーに楽しんでもらえる動画となっていたのも特徴的でした。

@beerball_suntory 炭酸でつくって楽しむビールって新しくない? #ビアボーラーズ #ビアボールやってみた #ビアボール #ビアボールアンバサダー #話題のビアボールどう飲む @しなこ🌷💜 ♬ オリジナル楽曲 – ビアボール

また、ほかのクリエイターへの呼びかけを入れている動画もあって、クリエイター間での連動が生まれているのはおもしろい仕掛けでした。

前田 その部分も含めてうまく設計できたな、と。

クリエイターとのコラボ動画だけで商品の魅力を伝えようとすると、我々としても「この要素はおさえないといけない」「こっちにいったら間違って伝わるかも」と考えて、つい制限をかけすぎてしまうことがあるんです。

でも、今回はそういった商品としておさえなければいけない部分は、6名が集まった「ビアボーラーズ大集合編」の動画をつくることで担保しました。

その分、各クリエイターの動画は、「みなさんの普段のスタイルや個性を活かした動画をご提案ください」と伝えて、自由につくってもらいました。

ブランドからのメッセージを含めた大集合編と、各クリエイターが個性を表現した動画がセットで成り立っているんです。

 

──ユーザーからはどんな反応がありましたか?

前田 個人的にうれしかったのは、ほかのプラットフォームで「ビアボールってTikTokでよく見る」といったコメントが結構あったことですね。

「ビアボール」がTikTokという最先端の場所で話題化している状況をつくりたかったので、ほかのプラットフォームで「TikTokで話題の」といったコメントが出たのは狙い通りでした。

さらに言えば、「あのクリエイターの動画でもビアボール見たよ」というコメントも多く、ユーザーが各クリエイターさんの動画を単体で見るだけでなく、TikTokの中で横断的、複合的に楽しんでもらえたのかなと思います。

村田 コメントを見ていると、「ペプシでつくるのが好き」「氷抜きでもおいしい」など、飲んでみた感想やお気に入りのアレンジを紹介するコメントでにぎわっていたのがTikTokらしいなと思いました。

 TikTokの特徴として、「TikTokを視聴するときはTikTokだけを楽しむ」という方が多く(※2)、視聴だけで終わらずに、「みんなどんな反応をしているんだろう?」とコメントを見る方が多いんです。

※2 出典:TikTok for Businessメディアインサイトレポート フルアテンション視聴へようこそ!

その中で、「なら私はこうやって飲んでみよう」といった会話がユーザー同士で生まれていくのがTikTokらしさだと思います。

今回も、最初に視聴した段階では「おもしろそう、ちょっと気になる」という感じだったのが、コメントを見て「この飲み方いいかも」と興味が深まり、実際に試して自分もコメントするという流れが生まれたのだと思います。

TikTokユーザーは新しいものが好きでトレンドセッター的なモチベーションを持つ人が多いので、いち早くほかのユーザーに広めたいという人も多かったのでしょう。

多様なユーザーの会話の中に、いかに入り込むか

──個別の動画ではクリエイター側の自由度が高そうですが、正直、企業側からするとコントロールが難しいのでは?

前田 企業側からの要望が多くなると、どうしても「言わされている感」が出てしまいます。ユーザーに広く受け入れてもらうためには、クリエイターさんの“いつものフォーマット”のなかでコンテンツが生まれることが重要です。

例えば、「ビアボーラーズ」の1人、関ミナティ(マツダ家の日常)さんは、「いやヤバイでしょ」「あははははーん」と叫ぶスタイルが特徴なのですが、最近のご自身の投稿では見る機会が少なくなっていたんです。

今回、この原点のフォーマットを活かした動画をつくってくれまして。「これぞマツダ家の原点」「これを待ってた!」といったコメントが多数集まりました。

@beerball_suntory ロスチャイルドサントリービアボール🕶 #ビアボーラーズ #ビアボールやってみた #ビアボール #ビアボールアンバサダー #マツダ家 #マツダ家ボイス @M2DK/マツダ家の日常 ♬ オリジナル楽曲 – ビアボール

動画が“いつものフォーマット”であるがゆえに、マツダ家さんがつくるコンテンツとして違和感がなく、やはりおもしろい。商品と直接関係ない部分ですが、ユーザーに広まったのはここに要因があるのではと振り返っています。

 余談ですが、事前に関ミナティさんから「『ロスチャイルドサントリー』って言っていいですか?」って確認も来て(笑)。真面目な話、法務チェックも取ったんです。

 

──結構きわどいワードですが、よく審査に通りましたね……

前田 通った理由としてはサントリーに「オモロイものをつくろう」という企業風土があることが大きいと思います。

それに加えて、今回はMZ世代をターゲットにする商品で、どう彼らにコミュニケーションするかという課題がありました。

 MZ世代はこちら側が言いたいことを言うだけでは、そもそも聞いてもらえない、見てもらえないという前提で、「どうやって彼らの会話の中に入り込むか」を意識して企画を進めました。

村田 前田さんのお話はTikTokでコンテンツ作成をするうえでヒントになる部分だと思います。

つまり、TikTokでは「いかにコンテンツにエンターテインメント性を持たせられるか」が重要で、ブランド側にもある程度許容していただきながら遊びの幅があると、ユーザーにも響きやすいと思います。

TikTokの中でもユーザーのトレンドの変化はすごく激しいのです。その中で「次に好きになるものを探したい」というTikTokユーザーに向けて、新しくてインパクトのある情報や価値観を届けていくことが重要です。ブランド側はそこを深掘りしてもらえたらと思います。

前田 その点で、TikTokでは凝った動画を1本つくるという方法で話題を広げるのは難しくなってきたと感じています。

 TikTokには多様なクリエイターやユーザーがいて表現の仕方もさまざまですし、多様な「好き」があふれています。こうしたプラットフォームでは、渾身の1本を出すよりも、いろいろな人が興味を持てるような複層的なものを出していくことがすごく重要なのかな、と。

 今回も、「ビアボール」を自由につくって楽しんでもらうというテーマは共通していますが、それをいろいろなクリエイターに表現してもらいました。こうした多様性を意識した設計は必要だと思います。

企業自らユーザーとなってTikTokを使い倒す

──サントリーでは2018年からTikTokを活用したプロモーションを実施しています。これまでの経験から「TikTokを使い倒すヒント」を教えてください。

前田 TikTokが日本に上陸してすぐ、「ペプシ」のプロモーションを実施したのがサントリーでの最初の取り組みでした。当時話題になっていたダンス動画に乗っかったらおもしろいんじゃないか、と。

その後、「クラフトボス」で初めてTikTokクリエイターを応援するクリエイティブコンテストを実施しました。

そうして試行錯誤する中でこれまで一貫して意識してきたのは、我々側がTikTok上で何かを伝えるのではなく、「TikTokの中にいるクリエイターやユーザーをいかに巻き込んで、一緒につくっていくか」ということ。

 TikTokのユーザーがどんな反応をするのかを知るために、自分たちでサントリーバーチャル社員「山鳥水生」というアカウントもつくりました。100本ノックのように動画をつくり、バズった、バズらないを繰り返し、「TikTokで話題になるために何が必要か」というノウハウを積み上げるラーニングをしています。

サントリーのバーチャル社員「山鳥水生」のTikTokアカウント(https://www.tiktok.com/@mizuki_yamatori

 

村田 企業が1クリエイター、1ユーザーとなってTikTokのカルチャーに入り込むというのは、すごくいい取り組みだと思います。

 TikTokでの話題や表現のスタイルが多様化する中で、「ユーザーが何を求めているのか」「TikTokでどのように話題が生まれていくのか」を知るには、自分たちがユーザーとなってPDCAを回していくことが大事です。

 特に、これからTikTokにチャレンジしたいという企業がインパクトを生み出すためには、3つのステップが挙げられます。

まずは「動画を見てもらう」こと。TikTokは「フルスクリーン、音声オン」で視聴するユーザーが多く、この特性を意識して見てもらえるコンテンツを出していくことが重要です。

次は「エンゲージメントを高める」こと。ユーザーの興味関心をさらに深め、いいねやコメントをしたくなるようなコンテンツを意識します。

そして最後のステップが、コンテンツを楽しんでもらった先に「事象を生み出す」こと。ユーザー同士の発話を促す仕組みをつくり、購入の後押しをしていくことが、「TikTok売れ」につながるかどうかのポイントです。

こうした王道のやり方に加えて、「外れ値」もぜひ楽しんでください。

TikTokの活用法の正解は1つではなく、ブランドやユーザーによって変わってきます。実際、今までにないコンテンツをつくってみたら、思わぬところからユーザー接点が生まれたり、コメントがにぎわったりするケースもあります。

 

──最後に、「ビアボーラーズ」の今後の展開を教えてください。

前田 第1弾が多くのTikTokクリエイターに参加してもらってすごく盛り上がったので、今後も継続してTikTokでノイズをつくっていきたいと考えています。

 3月24日から第2弾の企画が始動しまして。次は「ビアボーラーズ」の新メンバーオーディションを実施することになりました。「ビアボール」を自由に楽しく飲んでくれるクリエイターをメンバーに加えて、「新生ビアボーラーズ」としてCMをつくる予定です。

やはり、TikTokはクリエイターやユーザーと一緒に展開していくもの。どんなクリエイターが参加してくれるか未知数ですが、みなさんに自由に「ビアボール」を楽しんでもらうことが、ブランドのストックになっていくはずです。

村田 TikTokを活用した「ビアボール」のプロモーション戦略の裏側や、マーケターがおさえるべきTikTok活用のポイントについては、4月18日に開催する「TikTok for Business ForYou Summit 2023 Japan」でさらに詳しく紹介します。

 サントリーの前田さんも登壇するので、もっと詳しく知りたいというマーケターの方は、ぜひご参加ください。

 

文:村上佳代
写真:小池彩子
デザイン:小谷玖実
編集:中野佑也

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