TikTok売れでシェア1位に 花王ビオレUVのTikTok活用戦略
2023年2月に発売された花王の日焼け止め「ビオレUV アクアリッチ アクアプロテクトミスト(通称:瞬感ミストUV)」が、発売約6ケ月弱で600万本を出荷する大ヒットを記録した。成功要因の1つとして同社が挙げるのは、3年にわたり注力してきたTikTokでのプロモーションだ。
「ビオレUV」の成果を受けて、現在までに、花王の商品ブランドの実に90%以上がTikTokにてキャンペーンを実施。22年の全社でのTikTok活用は前年比400%になったという。
TikTok売れの現場を探る本記事では花王の小原聡太郎氏と、同氏と共に施策の立案・実施に取り組んだTikTok for Businessの川村美乃氏に話を聞いた。
※この記事は日経クロストレンド(2023年8月29日)、日経エンタテインメント!(2023年9月4日発売 10月号)に広告掲載したものです。
左:小原聡太郎氏 / 花王 ヘルス&ビューティケア事業部門スキンケア事業部 シーズン
右:川村美乃氏 / TikTok for Business Global Business Solutions, Japan FMCG Industry Client Partner
――花王が1996年から展開する日焼け止めブランド「ビオレUV」。年齢性別を問わず、幅広い世代をターゲットとするブランドの性質上、商品のプロモーションはテレビCMを中心に行い、徐々にウェブやSNSでも展開してきた。TikTokの活用は20年から検討を始め、21年からスタート。当時は、どのような狙いがあったのだろうか。
小原聡太郎(以下、小原):若年層、特にZ世代の日焼け止め習慣を作っていきたいと考えていました。Z世代にはメーカーが発信する機能紹介コンテンツをスルーされてしまう傾向があります。我々から伝えたいことはたくさんあるのですが、なかなか見てもらえない。そこで、メーカー発信コンテンツをスルーする層への認知、興味喚起を期待して、TikTokを活用することにしました。
活用1年目の21年は、同年に一部店舗で先行発売した新製品「ビオレUV アクアリッチ アクアプロテクトローション(通称:水層パックUV)」をプロモーションしました。この商品は、肌につけると化粧水のように「すーっ」と広がり、その後パックのように「ぴたっ!」と肌に密着、変化する使用感がウリ。Z世代が使いたくなるような策がないかと相談したところ、ブランドエフェクト※1とハッシュタグチャレンジ※2の施策をご提案いただきました。
左:ビオレUV アクアリッチ アクアプロテクトローション(通称:水層パックUV)
右:ビオレUV アクアリッチ アクアプロテクトミスト(通称:瞬感ミストUV)
2021年(上)と2022年(下)のハッシュタグチャレンジ
21年は使用感を伝達しながら商品認知拡大、22年はさらに商品を身近に感じてもらうため「すーぴた」の愛称を刷り込み、
ビオレUVブランド全体へのポジティブな評判を蓄積した
※1「ブランドエフェクト」:自社ブランドや製品をプロモーションするためのオリジナルエフェクトを制作し、ブランド体験を促進する。例えば、顔にメーキャップがされたり、髪の色が変わったりするなど様々なバリエーションがある。
※2「ハッシュタグチャレンジ」:ユーザーが特定のテーマに沿って動画を投稿し、トレンドを作り上げるためのTikTok広告メニュー。現在は「ブランドミッション」のパッケージの中で利用可能。
――エフェクトを用いたハッシュタグチャレンジの投稿動画は1年目に1286件、2年目はそれを上回る2644件となり、商品の認知~エンゲージメント向上に大きく貢献。だが、ハッシュタグチャレンジ単体で終わらせず、美容系クリエイターを起用した商品レビュー動画を組み合わせることも提案した。
小原:「すーっぴたっ!」という言葉を楽しく伝えることに加え、やはり商品のベネフィットも伝えないといけない。TikTokはクリエイターと視聴者の距離が近くてコメント欄の熱量も高いので、ハッシュタグチャレンジだけでなく、クリエイターとタイアップした商品レビュー動画制作も実施しました。
川村美乃(以下、川村):ハッシュタグチャレンジは話題化に非常に有効ですが、TikTokユーザーにとって楽しく分かりやすい企画にするためにブランド要素を詰め込みすぎるのはNG。商品ベネフィットを伝えるレビュー動画は別で作ったうえで、ハッシュタグチャレンジで商品に興味を持った視聴者がさらに商品への理解を深められるよう、ページに導線を貼って連動させました。
小原:「●●ちゃんが紹介するなら買おう」といった声が多かったのが印象的でしたね。21年と22年は、エフェクトを使ったハッシュタグチャレンジで「すーっぴたっ!」というフレーズの認知とエンゲージメントを高めながら、クリエイターさんのレビュー動画を走らせたことで、売り上げが好調に推移し、ビオレUVは日焼け止めブランドでNo.1※3になりました。
※3「インテージ」:SRI+日焼け止め市場 2021年1月~2022年12月 累計販売金額
――TikTok活用3年目となる今年、花王はプロモーション施策をさらに拡充。エフェクトを用いたハッシュタグチャレンジに代わり、よりストレートに話題化とセルアウトの促進を狙う施策に挑戦することを決めた。
小原:21、22年の施策のおかげで、「ビオレUVはいい日焼け止め」といったブランド全体に関するコメントやUGC※4の検証動画が生まれるようになりました。23年は、前年に先行販売をスタートした「瞬感ミストUV」に力を注いだのですが、商品の特性をストレートに伝えてもユーザーのみなさんがポジティブに受け止めてくれるのではないかという自信が生まれてきました。
川村:TikTokは一方的な動画発信のプラットフォームではなくコミュニティー。2年間の施策で得られたブランドへのポジティブな声を生かして、今年は一気にセルアウトにつなげるアプローチに挑戦することにしました。商品中心のクリエイティブでUGCと口コミを誘発しながら、セルアウトにつなげていくため、最もインパクトのある広告プロダクト「TopView」※5を中心としたフルファネル※6でのアプローチをご提案しました。
2023年施策の全体像(資料提供:TikTok for Business)TopView開始直後から美容系クリエイターによる自発的な投稿が急増、好循環へ
小原:美容系クリエイター起用のTopViewで全国発売を大々的に訴求することでUGCを誘発することができましたし、美容系クリエイターから一般の方々まで幅広いクリエイターがオーガニックで商品レビューを投稿する好循環が生まれました。これはTopViewで一気に話題化することで、商品がクリエイターさんたちの目に止まったからだと思います。
また、TikTok内の「日焼け止め」の検索結果においてもビオレUVの動画が多数上位に表示される状態を作り出すことができました。
実際に瞬感ミストUVは売れており、発売約6ケ月弱(2023年2月11日~8月1日)で累計出荷本数は600万本を突破。全国発売初年度から日本一売れている日焼け止めになり、「日経トレンディ」にて2023年上半期ヒット大賞美容・ファッション部門で大賞に選出されました。
川村:日焼け止めの新商品が、初年度から売れることは珍しいそうですね。
小原:そうなんです。というのも、日焼け止めってすぐに効果が分からない商品なので。1年を通じて使用した方の「日焼けした/しなかった」といったレビューを参考に、翌年購入されるというパターンが一般的なんです。ですので、前年にテスト発売してはいますが、全国発売すぐにNo.1となったのは我々も驚きでした。
川村:花王様と一緒に第三者調査(KANTARクロスメディア調査※7)を行ったのですが、瞬感ミストUVの広告効果による認知リフトにTikTokが大きく貢献していることが分かりました。話題を巻き起こせるTopViewを中心に組み立てたフルファネルスキームで実施したことが功を奏したと考えています。クリエイター動画だけでなく、花王様側で作っていただいたブランド素材を併走させることで、しっかりとブランドの世界観やメッセージを訴えた点もポイントだったと思います。KANTARからも、広告感のあるものとないもののバランスがよく、高い視認性に結び付いたのではないかと分析をいただきました。
弊社のブランドリフト調査では、試してみたいという「意向」の項目において、これまでのTikTokの広告施策内で最も高い※8アップリフトが見られており、強い興味から一気に購買につなげられたと考察しています。
小原:Z世代とブランドの出合いの場、絆作りの場としてTikTokの活用をスタートしましたが、これまでアプローチできなかった層がビオレUVを評価してくれていると実感しています。しかも我々が発信するだけではなくて、UGCとしてたくさんのコンテンツが生み出されている点は、1番の大きな成果だと思っています。TikTok内でビオレUVに対する興味・関心の素地ができているので、今後新製品を出した際にも興味を持っていただいたり、購入につながったりするのではと期待しています。
川村:今、広告は一方的に見せるのではなく一緒に価値を作る時代。TikTokは、みんなでコンテンツを楽しむカルチャーがあるので、ポイントを押さえれば広告であっても楽しむ対象・有意義な情報として認識され、前向きな視聴やアクションの対象になります。もちろん簡単ではないものの、“TikTok売れ”は適切なプラン設計・クリエイティブをもってすれば、広告でもある程度計画的に起こせる手応えを感じています。今後も、花王様と一緒にビジネスインパクトにつなげるための研究をしていきたいと思っています。
23年は生活者目線で興味を喚起する複数のクリエイター動画とブランドの世界観をしっかり伝えるブランド素材の双方向で認知から購買へ消費行動を加速させた。ありちゃん~毎月の支出の半分をコスメに充てる女~を起用したTopViewの動画冒頭では、前年に限定発売で話題になっていたことをフックに全国発売を訴求(上)。TikTok for Businessのアドバイスを受け、花王が制作したCM素材も配信し、ブランドメッセージを分かりやすく届ける機能を果たした(下)
※4「UGC」:User Generated Contents/ユーザー生成コンテンツ。企業ではなく一般ユーザーが自発的に制作・生成したコンテンツのこと。
※5「TopView」:ユーザーがアプリを起動するとフルスクリーン/サウンドONで表示されるプレミアムな広告。1日でTikTokユーザーに最大級のリーチができる。
※6「フルファネル」:複数の施策を密接に連携させることで、認知から購入にまで導く施策。
※7「KANTARクロスメディア調査」:複数媒体利用している施策において、どの広告媒体がどんな効果をもたらしているかを検証する第三者調査。
※8TikTok for Business調べ 日本国内施策 2020年11月〜2023年7月
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