ユーザーファーストが「共感」を呼ぶ。バイトルが実施する、TikTok を活用したコミュニケーション戦略とは
TikTokを広告プラットフォームとして活用する動きは急速に進んでいるが、その背景には「ユーザーの共感」が大きく影響している。
アルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」は、今年6月に新生活を応援するキャンペーンとして、オリジナル楽曲の制作やユーザーからの自発参加・二次拡散を促す、ユーザー参加型の施策をTikTokなどで実施した。同プロモーションの関連動画の総再生回数は5000万回以上に達し、そのうち約80%はTikTokが寄与、TikTok上でのUGC動画投稿は1600件以上という大きな成功を収めた。
「TikTokのコンテンツの考え方は、自社のフィロソフィーである『ユーザーファースト』と一致する」と話すディップ株式会社 大門一将氏、「広告エンターテインメントという概念が極めて重要」と主張するTikTok for Business 桑原裕也氏に、今回のキャンペーンが成功した理由を聞いた。
※このインタビューはDIGIDAYにて2023年11月27日に広告掲載したものです。
――まず、「新生活応援キャンペーン」実施の背景を教えてください。
大門一将氏(以下、大門):バイトルは求人情報サイトであり、ターゲットは有期雇用者全般になります。今回の「新生活応援キャンペーン」は、これからアルバイトを始めるであろう若年層がメインターゲットです。私たちはまず、新生活とともにアルバイトを始めるときの気持ちはいったいどういう気持ちなのか、インターネット上で声を集め、分析しました。
調べてみると、「バイト先で馴染めるだろうか」「自分でもこの仕事はできるだろうか」という不安があることがわかり、そういった方々の後押しをしたい、と考えたのが「新生活応援キャンペーン」を始めようと思ったきっかけです。
我々は「ユーザーファースト」をフィロソフィーに掲げています。たとえば動画で職場の雰囲気を紹介したり、アルバイトを始める前に実際に職場体験の場を提供したり、求職者の方が抱く事前の不安を取り除けるような取り組みも行っており、これは他社様にはない強みだと思っています。この「ユーザーファースト」の考えに、TikTokはマッチすると考えました。
大門 一将/ディップ株式会社 商品開発本部マーケティング統括部ブランド戦略部 部長。大手不動産会社の広告宣伝担当を経験したのち、2019年にディップ株式会社に入社。
――動画で流れる楽曲からアーティストと一緒に制作した、とうかがいました。その意図は何でしょうか?
大門:キャンペーンを実施する際、ユーザーから「信頼」を得ることがもっとも重要です。TikTok for Businessの「Z世代白書2023」なども拝見すると、若年層は押しの強すぎる広告を好まない傾向があります。彼らが興味を持って、等身大でコミュニケーションできる広告とはどのようなものかを考え、若年層から支持されているアーティストのmeiyoさんとコラボし、楽曲から制作しました。
いちばん大事にしたのは歌詞の部分です。新生活に不安を抱えている人たちと「一緒につくりたい」という想いがあったため、不安の声をインターネット上で募ったんです。それを歌詞に反映させているので、我々が一方的にメッセージを歌にするのではなく、ユーザーの気持ちを代弁した楽曲になっています。はじめてバイト応援ソング「バイトル!」の楽曲リリースから2週間弱で300万回以上再生され、想像以上に反響がありました。
――今回のキャンペーンの内容や定量的な評価を教えてください。
桑原裕也氏(以下、桑原):今回は、ユーザーが特定のテーマに沿って動画を投稿し、トレンドを作る広告メニュー「Branded Mission with Hashtag Challenge」などを活用しています。
また、「バイトル」のキャラクター「バイチュー」をイメージした可愛くて盛り上がるオリジナルエフェクトも制作し、多くの方に楽しんでいただける施策を盛り込みました。約3週間のあいだにさまざまなTikTokクリエイターから動画を投稿してもらい、視聴者に楽曲と「バイトル」の印象付けを行い、ユーザーの投稿も促しました。
その結果、「#はじめてバイト応援チャレンジ」はTikTok UGC投稿数約1600件、TikTok総視聴回数は4000万回を超えました。これは多くのユーザーがキャンペーンを好意的に捉えて、参加してくれたことを表しています。また、弊社でブランドリフト調査も行いましたが、ブランドの好意度(絶対リフト)が6.4%増という数字を叩き出しました。TikTokクリエイターの動画で積極的にバイトに関する言及をしていたこともあり、バイトに関連した会話も促せました。
大門:バイトルは過去にもTikTokキャンペーンを実施していますが、今回の数字は過去最高です。UGCの投稿数はかなりよい結果だったと思っています。リーチだけでなく、態度変容を起こせたことに、とても価値を感じました。
――全体のメディア戦略のなかで、TikTokの立ち位置やKPIはどのように考えていますか?
大門:テレビCMでリーチを取り、そこからダイレクト広告でコンバージョンさせていくという従来のやり方もありますが、やはり「ユーザーファースト」を考えたときに、TikTokは興味を持って見てもらえるプラットフォームであり、流行の発信となる場所でもあります。そういった意味で、ターゲットの親和性も含め、ブランドをしっかり底上げできると思っています。
また、テレビCMでリーチしにくい層にメッセージを届けるという点でも、TikTokを重視しています。ほかのプラットフォームと比較してもパフォーマンスがよく、特に若年層ターゲットのプロモーションには優先的に取り組みたいメディアと位置付けています。
マーケティング統括部全体のKPIについては、ユーザーの「応募数」を第一に考え、ブランド戦略という点では、利用意向を上げていくことをKPIとしています。TikTokに関しては、特にUGCの数ですね。ユーザー(第3者)の声というのが、信頼度を高めることに繋がると考えているからです。アルバイトを探すときの気持ちは、本当に人それぞれですし、我々はマーケティング戦略全体でユーザーの声を一番大切にするべきだと考えます。この想いを、プロモーション戦略にも落とし込んでいるつもりです。
――TikTok for Business側では、メディア戦略としての活用をどのように捉えていますか?
桑原:TikTokは大きな特徴が2つあります。ひとつは短尺、縦型のフルスクリーンで音声ONのフルアテンション視聴ということ。スワイプしてどんどん動画を切り替えて見るため、ながら視聴をする人はほとんどいません。つまり、スマホ画面を集中した状態で見ることになります。これが非常に大きな特徴です。
もうひとつは、おすすめ視聴による発見があること。TikTokがユーザーに対しておすすめの動画をどんどん提案していくなかで広告もユーザーと自然に接触するため、広告もおすすめコンテンツのひとつとして捉えて頂くことが可能です。
デジタルネイティブのユーザーはとくに、デジタルのプラットフォーム上で情報収集から認知、購買まで一気にファネルが落ちていきます。ユーザーがTikTok上のコンテンツに強い共感を持っていただくと、かなり速いスピードで認知から購入まで進むと考えていますので、アッパーからローワーまでフルファネルでご活用いただけます。
ディップ様が掲げる「ユーザーファースト」に通じるところがありますが、どのファネルにおいても「広告エンターテインメント」という概念が極めて重要です。企業様の一方的な情報発信ではなく、ユーザーのベネフィットに寄り添った、つい見たくなるような広告を届けていくこと。デジタルネイティブの世代にはとくにそれが有効で、今回の「#はじめてバイト応援チャレンジ」はまさしくそれが実現できた事例だと思います。
桑原 裕也/TikTok for Business Global Business Solutions, Japan, Strategic Accounts, Client Partner。事業会社にて広告事業、マーケティング業務に従事した後、2022年にTikTok for BusinessへClient Partnerとして参画。人材業種の広告主を中心にフルファネル施策の提案に従事。
――人材サービス系は差別化しにくいという印象がありますが、バイトルの差別化方法についてはいかがですか?
大門:私たちは「意味ある差」を大事にしています。働く人の待遇向上の実現を図る「ディップ・インセンティブ・プロジェクト」という取り組みでは、お客様(掲載企業)に「時給アップ」によって採用力を強化していただくために、時給によって働く本人のモチベーションや頑張り方が変わったり、アルバイトの定着率も上がったりする実例などを、日本全体の賃上げの時流も交えながら直々にお話しさせていただいています。
企業からもその取り組みに対して支持をいただいており、それがバイトル独自の価値になっていると感じます。
桑原:TikTokのアカウントの使い方も、特徴的ですね。バイトル公式のキャンペーンなどに使われるアカウントと運営会社のディップ社員の人がTikTokを全力で楽しんでいるアカウントの2つを活用されていて、ユーザーの共感を呼ぶユニークな使い方だと感じます。
また、バイトルは今回のキャンペーンだけでなく、継続的にフルファネルでTikTokをご活用いただいており、アッパーミドルの利用意向をあげていくことに加え、ローワーのアプリインストールまで設計されています。他社の人材系企業においては、フルファネルでTikTokを使い込んでいる企業はまだ多くないため、バイトルの使い方は非常に参考になるのではないでしょうか。
――今後の展開について。バイトルが今後、TikTokで新たにトライしたいことを教えてください。
大門:我々のターゲットは若年層に次いで主婦層、ミドル層です。TikTokのユーザー層がミドルアップしていると考えると、そこにターゲットを据えた施策も考えられます。実際、有期雇用者全体でいくと、圧倒的にシニア層が多数です。そのあたりのボリュームを獲得していくうえでも、ぜひチャレンジしたいですね。
2つめはUGCの部分です。今回のキャンペーンでは、「万年に一度現れる素敵な広告」「背中を押されました。アルバイト挑戦してみたいです」といったように、ポジティブなコメント声が寄せられたことが印象的でしたし、そういう声をより多くのお客様に伝えられるように継続的にTikTokを活用していきたいです。
加えて、広告クリエイティブの検証です。同じ素材を活用しつつ、見せ方を少しずつ変えて、細かくチャレンジできるのはデジタルならではと感じます。どういった広告がもっとも効果が高いのか、引き続き検証していきたいですね。
――人材サービスの業界でも、TikTok活用の可能性はありそうですね。
桑原:アルバイトもそうですが、「転職」へのアプローチにTikTokを活用しているケースも増えており、実際、転職系企業の広告配信もかなり速いスピードで増えています。
私どもが重要視している概念に、「ブランドフォーマンス」というものがあります。「ブランド広告」と「パフォーマンス広告」が互いに補完し合う全体的なアプローチです。これは、中長期的にブランド創造、需要喚起をしていくような意味合いがあるのですが、人材サービス業界の企業様の場合もアプリをインストールして応募するまで、この導線にブランドフォーマンスの考え方は非常に重要ではないでしょうか。
需要創造から刈り取りまで、フルファネルで活用できるTikTokだからこそ、できることがあると思っています。
Written by DIGIDAY Brand STUDIO(島田ゆかり)
Photo by 渡部幸和
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