キットカット新商品の販促が成功した理由:TikTok を起点に認知や店舗売上を拡大
「キットカット」は1973年に日本で販売を開始し、今年はちょうど50周年にあたるが、その節目の年のプロモーションにおいて、TikTokが起爆剤として大いに貢献しているという。
ネスレ日本は、周年記念の新商品として「キットカット ミニ よくばりダブル 全粒粉ビスケットin & オリジナル」(以下、「よくばりダブル」)を発売。2つの味を組み合わせた「キットカット」は、同社において初めての試みだ。
この商品の公式アンバサダーとして、古坂大魔王さん/ピコ太郎さんを起用。TikTokではユーザーがピコ太郎さんと一緒に盛り上げるハッシュタグチャレンジ「#キットカットチャレンジ」を開催したというわけだ。
「キットカット」といえば、パッケージをコミュニケーションツールとした、情緒的なプロモーションが有名だが、今回、ピコ太郎さんを起用してTikTokを活用した意図はどこにあるのだろうか。ネスレ日本のマーケティング部長を務める村岡慎太郎氏にその意図を聞くとともに、TikTok for Businessの前川基氏にTikTokの強みなどを聞き、このプロモーション動画の成功要因を探った。
※このインタビューはDIGIDAYにて2023年12月5日に広告掲載したものです。
――まず、「よくばりダブル」の発売に伴ったプロモーションの背景について教えてください。
村岡慎太郎(以下、村岡):今年は「キットカット」の日本発売50周年で、複数の周年企画を予定しています。「よくばりダブル」のプロモーションは、そのひとつとして実施しました。
「よくばりダブル」は、「全粒粉ビスケットin」と「オリジナル」の2つの味を上下2層に重ねてあり、2つの定番の味を一度に楽しめる、まさに「よくばり」な味わい・楽しみがコンセプトです。
プロモーションは、お客様に「よくばりダブル」という商品を認知していただくことが、まずは大きなポイントになると考えました。どうすれば本商品の特徴と魅力が伝わるのかを話し合う会議で、私は無意識に両手を左右からくっつける動作を何度もしていたんですね。
あるとき、「この動きは『ペンパイナッポーアッポーペン』だ。だったらピコ太郎さんにお願いしよう」と、思ったのが始まりでした。
村岡 慎太郎/ネスレ日本株式会社 コンフェクショナリー事業本部 インツーホーム マーケティング部 部長。2003年ネスレ日本入社後、コーヒー豆や資材・物品サービスのバイヤー、新規デジタルメディアの開発、各ブランドのメディアプランニングに従事。その後、スイス本社での1年間のミッションとして、グローバルメディアマネージャーを勤めた後、2021年より現職。
――今回、メディア戦略をテレビCMとTikTokに絞ったそうですが、その理由を教えてください。
村岡:実は、今回のプロモーションには、もうひとつの大きな目的がありました。それは、「よくばりダブル」を構成する2つの定番商品である「全粒粉ビスケットin」と「オリジナル」の売上を同時に上げることです。「よくばりダブル」の存在自体が、「キットカット」の定番商品を売るためのプロモーションでもあるのです。
メディアの使い方としては、お客様向けに「よくばりダブル」の認知とコミュニケーションを目的としてTikTok、流通業者向けに「全粒粉ビスケットin」のテレビCM、このように主な役割を分けて実施しました。
多くの人にとってスマホで音を聞きながら映像を見ることが当たり前になっていますし、TikTokは、かねてからプロモーションに活用したいと考えていました。TikTokのプラットフォームの特徴やユーザー特性と、今回の施策内容の親和性の高さを踏まえると、TikTokしかないだろうと思い立ちました。
「よくばりダブル」のTikTok広告
――TikTokを起点として店頭での購買に繋げるために、どのようなことを意識したのですか。
村岡:TikTokに絞ってプロモーションを展開しましたが、ただTikTokを使うことで認知だけ獲得できればいいと考えていたわけではありません。そこで得た認知をきちんと店頭での購買につなげるように全体設計して実施できたことが、非常に重要だったと思っています。
お菓子のビジネスには、大事な要素が3つあります。ひとつ目が「ブランドとコミュニケーション」。2つ目が「味」、3つ目が「店頭」です。さまざまな食品のなかでお菓子カテゴリーは、事前に「このブランドの、この商品を買おう」と思ってお店に行くよりも、お店で買い物をしているときに、さまざまな刺激を受けてはじめて、「これ買おう」と思っていただくことが多い。そのため、普段からAVA(Availability、Visibility、Accessibility)を重視したプロモーションを意識しています。
最近は、店頭POPをお願いしても店側のリソースの問題で対応していただけないことも多いのですが、ピコ太郎さんのスタンドパネルならお客様に喜んでもらえるはずで、だからこそ設置してくれる店舗も多いはずと踏んで制作し、案の定、実際に多くの店舗で展開していただけました。TikTokのプラットフォーム特性が、ピコ太郎さんの魅力とぴったりマッチし、大拡散へと導いてくれたことが大いに影響していると思います。
前川基(以下、前川):店頭への橋渡しへの一助になれたのは、TikTok for Businessとしても嬉しい事例です。高い拡散力で広く反響を呼べることはTikTokが得意としているところで、TikTokを活用すればこういったアウトプット、あるいはプラスオンの価値が生まれやすいと感じています。
前川 基/TikTok for Business Global Business Solutions, Japan, Key Accounts, Client Partner。外資食品・飲料メーカー、製薬企業でデジタルマーケティングを担当した後、TikTok for Businessにてクライアントパートナーとして参画。主に飲食カテゴリーの営業を担当する。
――今回TikTokでは、ハッシュタグチャレンジを実施しましたが、その成果はいかがでしたか?
村岡:想像していた以上の成果がありました。視聴数も特別多く、実際に、目的としていた定番商品の売上増にも寄与することができています。昨対比が向上し、国内売上No.1*のチョコレートブランドとして、マーケットシェアもさらに高まりました。
*出典:インテージSRI/チョコレートカテゴリー/2022年1-12月/ブランド販売金額シェア1位
一方で個人的に一番感動したのは、ティザームービーを配信した際に、「初めてこんな長尺の動画を最初から最後まで見た」「楽しかった」というコメントを非常にたくさんいただいたことです。広告でありながら、エンターテインメントとしても楽しんでいただけた。こうした受容性に触れられたのは貴重な体験でした。
前川:視聴数は約9000万回で、これはいわゆる「TikTok売れ」したキャンペーンとほぼ同程度になります。拡散力から見ても、非常に上位の部類に入ると言えます。また、弊社で実施したブランドリフト調査でも、購入意向や経験形成がアップリフトしました。
――TikTokの特徴として、オーディエンスの感情面に訴え、行動を促すということが挙げられます。その特徴を活かすためにクリエイティブ制作で留意されたことはありますか?
村岡:私自身がTikTokのヘビーユーザーなのですが、自分がどんなときにTikTokを見ているのかと振り返ると、息抜きしたいときだと気付きました。TikTokの面白いところは、情報がどんどん変わっていってくところ。しかも、ポジティブな、クスッと笑えるような情報が多くて、まさに「Have a break」だなと思いながら見ています。受け手として身構える必要がなく、気軽なエンタメとして見られますよね。
今回の企画は、広告であっても、そうした楽しい気持ちを喚起するものにしたいという点を強く意識しました。50周年という節目の企画でもあるので、得意とするエモーショナルな雰囲気ではなく、とにかく楽しくやっていこうと考えました。
前川:エンターテインメント化されたコンテンツは、人の心を動かせます。購買行動を加速させる鍵はユーザーをどれだけ楽しませることができるか、ということではないでしょうか。今回のプロモーションは、広告でありながら、ユーザーを楽しませられれば、受け入れてもらえるということが実証されたと感じています。
――TikTokのプロモーションメニューを使った印象はいかがですか?
村岡:以前に共同キャンペーンで使わせていただいたことがありますが、やはり拡散力が圧倒的に大きいと思いますね。数字的な成果もしっかり出ましたし、お客様の反応も想像した以上にポジティブで、非常に満足しています。
しかも、スイス本社のビジネス戦略チームから、フルファネルでうまく活用できた事例として高く評価され、グローバルの事例にも選ばれました。今後もTikTok広告の色々なメニューにチャレンジしてみたいですし、違うキャンペーンの際にもぜひ活用させていただきたいと思っています。
たとえば、弊社が得意とする受験シーズンのキャンペーンにも活用したいですね。このキャンペーンのコアターゲットは、“受験生“ではなく、受験生を応援する人です。受験生を応援したい親御さん、友達、先生も、TikTokを見ていると思いますから。
――TikTok for Businessとしては今後、強化していきたい取り組みはありますか?
前川:強化したい取り組みは「売れ」に対しての証明です。具体的には、TikTokでの話題性が最終的にどのように売上へ影響したのかを、MMM(Marketing Mix Modeling)などを用い、どのような相関があるかを調査する取り組みを開始しています。
このアプローチにより、TikTokが単に「認知」を高めるだけでなく、「売上」にも貢献していることを証明し、プロモーション施策の再現性向上にも寄与すると考えています。証明が難しい部分ではありますが、このようなデータ分析を基に、アッパーファネルのみならず、ローワーファネル、店頭購買などにも活かしていけるよう、ブランドの皆様と共にさらなる成功を目指したいです。
――ユーザーとのコミュニケーションにおいて、TikTokは大いに活躍してくれそうですね。
前川:TikTokには、ブランドとユーザーとのコミュニケーションを活性化させる機能が数多くあります。またユーザーの動画に対するコメントの熱量も高いため、コンテンツに対しての盛り上がりが醸成しやすいです。
コト消費がマストのいまの世の中で、ユーザーと共創しながらブランドの魅力を高めていきたいという課題感を抱えている企業、マーケターの皆様に対して、強力なパートナーとしてお役に立てると考えています。
村岡:ブランドサイドが考えなければいけないことは、UGCを作りたいと思うブランドの製品を作ること、そして、コミュニケーションの内容を考えることです。今回の事例の成功も「ピコ太郎さんを活用したから」という点だけに終始せず、楽しんでいただけるコミュニケーション設計を丁寧に考えたからこそ。TikTokという、お客様が盛り上がる場所が存在している以上、必要なのはいかに楽しんでいただけるコミュニケーションを提供できるかだと思います。
前川:リーチプラットフォームとしてご活用いただくだけでなく、その先の価値提供に関しても、貢献していくつもりです。今回の成功はTikTok for Businessとしても、大きな実績になりました。
Written by DIGIDAY Brand STUDIO(内藤貴志)
Photo by 渡部幸和
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