Qoo10「メガ割」が最大手セールにも負けぬ認知を獲得。相性の良さを生かした、TikTok 広告の活用が鍵に
2023年Q4セール期において、抜群の認知を獲得したQoo10のビッグセール「メガ割」。国内のECモールでは後発でありながら、実購入者規模が加速度的に広がっている。その要因のひとつは、TikTokでの広告戦略だ。
Qoo10を運営するeBay Japanは、ビッグセール期に限らず年間を通してTikTok広告に注力。TikTok内でQoo10に関連するコンテンツが自然に醸成される環境を形成し、購買行動を後押ししている。加えて、今回の事例ではKantar社と連携し、ブランドリフト調査も実施。それによりビジネスインパクトが見える化され、戦略の新しい課題も見えてきたという。
eBay Japan合同会社 戦略マーケティング室 部長 モラーノ絢香氏とTikTok for Business Japan 千秋真之介氏、小關早紀氏に、今回のプロモーションの成功要因、さらにEC領域とTikTokのシナジーについて話しを聞いた。
※このインタビューはDIGIDAYにて2024年3月26日に広告掲載したものです。
――まず、メガ割キャンペーンについて教えてください。
モラーノ絢香(以下、モラーノ):メガ割は2019年にスタートしたビッグセールで、四半期に一度、2週間のキャンペーンを行うセールです。Qoo10にとってはマーケットプレイス上の購入者、出品者の両方がお客様となるため、どちらのお客様にもリーチできるクリエイティブを用意しますが、とくに購入者向けのクリエイティブやキャスティングを重視しています。
クリエイティブコンセプトは「お買い物と、あそぼう。」で、以前はコストコンシャスを訴求する戦略でしたが、いまはより集客力のあるクリエイティブを意識しています。具体的には、川口春奈さんを起用した「ナイトルーティン編」を制作しました。彼女が生活者として、寝る前の時間にスマートフォンを見ながら買い物を楽しむというストーリーです。コンセプトはその年の消費行動に合わせて検討しますが、2023年Q4期は「お買い物と、あそぼう。」というコピーを伝えることを優先度高く準備しました。
動画を中心に縦型の6秒、15秒、30秒を用意し、メガ割キャンペーン時はセール開始の2日前からTikTokのTopViewで6秒を配信するのですが、ここでTikTokのユーザー間でコンテンツが作られ、「#メガ割何買う?」「#メガ割会議」というようなハッシュタグが生まれます。カウントダウンとしても盛り上がってもらえるのは、TikTokならではと実感しています。
モラーノ 絢香/eBay Japan合同会社 戦略マーケティング室部長。慶應義塾大学卒業後、ITベンチャー企業、外資メディア戦略ファーム、外資IT企業、総合コンサルティングファームでの戦略部門、スタートアップ勤務経験を経て、2018年のeBay体制後、同年9月にeBay Japanに入社。Qoo10事業のBrand Marketingを主に、Qoo10とメガ割の認知拡大を推進。2022年10月より、現戦略マーケティング室部長に昇格し、戦略・提携・デザインの3チームのリードを担当。
――年間を通してTikTok広告に注力した狙いは何でしょうか?
モラーノ:弊社では、セールスを盛り上げるタイミングで買い物体験のシーンを分けて、エンターテインメントコマースの流れで、コミュニケーションを意図的に設計しています。お客様から評価を得られそうなコンテンツを意識し、お客様の声が大きいタイミングで投下するというメディア戦略です。そのため、常にパトロール(インターネット上でのリサーチ)を行い、「ネットで何が流行っているか?」というお客様のいまを知り、メディア戦略考案のヒントを得ています。
実はこの「パトロール」の情報源がTikTokでもあるのです。弊社のなかにあるデータは購入後のものですが、TikTokでは購入前、購入後、日常にある買い物行動すべてがコンテンツになります。そういう意味では、単なる広告面としてではなく、重要な情報源やビジネスに並走いただくパートナーとして、TikTokを重視しています。
TikTok内でハッシュタグが生まれ、オーガニックの「発話」が起きていることで自信も付きました。そこで、きちんと予算をつけて広告を実施すれば反応があるのでは、という実感もあり、TikTok広告に魅力を感じています。特に、お客様から作られた「#メガ割会議」というハッシュタグを見つけたことが自信につながり、少しずつ出稿を増やしてきました。
加えて、Qoo10は「非日常体験」であるメガ割だけではなく、新しいプロダクトやサービスのローンチなど、何かしらのキャンペーンを常に行っているため、日常的に出稿ができるTikTokに通年の出稿計画を持っています。
千秋真之介(以下、千秋):eBay Japan様による継続的な出稿により、TikTokのプラットフォーム内でQoo10に関連するコンテンツが自然に醸成される環境が出来ていることも、ポイントではないでしょうか。メガ割のプロモーション後には多くの購入紹介コンテンツが投稿され、それが積み重ねられて土壌がつくられ、プロモーションにユーザーが反応するということが起きています。
千秋 真之介/TikTok for Business Japan, Global Business Solutions, Strategic Accounts, EC Client Partner デジタル専業代理店、総合代理店での勤務を経て2021年にTikTok for Business Japanに参画。デジタルエージェンシー、総合代理店の営業担当を経て、現在はEC業種の広告主様の営業担当として従事。
――今回、Kantarのブランドリフト調査を行われたそうですが、調査を行った背景、その結果について教えてください。
小關早紀(以下、小關):今回、eBay Japan様とのパートナーシップの一環としてKantarと連携し、ブランドリフト調査を実施しました。過去にTopView広告をご活用いただき、「TikTokのなかではすでに認知が取りきれてしまっているのでは?」という仮説があっため、さらなるインサイトを得るために、世代別、性別、既存ユーザー、新規ユーザーなどの詳細なデータの調査を提案したという経緯です。
調査結果をみると、広告認知、ブランド(Qoo10)への好意度と利用意向に非常に大きなリフトが見られ、TikTok広告が大きく貢献できていることがわかりました。また、助成認知においてもベースラインが9割という高い結果に。特にノンユーザー(過去に利用したが現在はしていない、または利用経験がない人を含む)のリフト値が高く、ブランド好意度が+10.6%、利用意向が+14.5%という結果になりました。
また、18〜39歳の層では、大手ECモールのセールの認知率と比べて約6〜11%も高い数値が検出でき、ブランドビルディング効果が可視化できています。
小關 早紀/TikTok for Business Japan, Global Business Solutions, Marketing Science Measurement Partner 国内プラットフォーム、外資IT企業での勤務経験を経て、2022年に入社。日本のMarketing Scienceチーム立ち上げに従事し、マーケティング効果の計測と可視化を推進。
モラーノ:弊社でも独自の認知調査を行っていますが、大規模な調査はコストがかかることもあり、今回、客観的な観点で詳しく調査してもらったことはとても有益でした。まず、データに対して再現性があったこと。そして今回の調査により、その「差分=インパクト感」を可視化でき、ターゲット層にしっかりとキャンペーンを認知させることができたと確認できました。自社調査と外部調査をもとに効果をダブルチェックすることができたことは収穫でした。
メインターゲットとしている女性の18〜39歳の層の認知が9割以上あったことには、とても満足しています。調査対象だった11月期は大手ECモールのビッグセールがひしめく非常にチャレンジングな月でしたが、セールが立て込む時期でもメガ割の認知がほかのビッグセールよりも高かったというのは、非常に背中を押される結果でした。まだまだユニークな戦い方ができると自信を持たせてもらえたように感じます。
――では、TikTokとQoo10のシナジーはどのように捉えていますか?
モラーノ:ほかのプラットフォームでの投稿は「セルフフォーカス(Look at me)」が主流ですが、TikTokの投稿は「話題・体験フォーカス(Look at it)」だと考えています。これが非常に重要なポイントで、「買い物の楽しみ方を一緒につくっていく」のはTikTokならではです。商品の楽しみ方、遊び方などの購入体験は、今回のメガ割のコンセプト「お買い物と、あそぼう。」と非常にマッチしており、買い物体験をエンタメに変えられるTikTokとのシナジーは狙いどおりでした。
また、購入レビューはいまや欠かせない情報となっていますが、「正直なコメント」が求められる面もあり、TikTokはリアルなインサイト、ありのままのインサイトを提供してくれるプラットフォームだと感じます。
千秋:モラーノさんがおっしゃるとおり、いわゆる「モノ軸」ではなく、TikTokは投稿しているユーザーの生活に寄り添った体験型コンテンツが人気なので、Qoo10で買うことの意味付けにもしっかり繋がっているのではないでしょうか。メガ割で買う意味をユーザー側がつくっているという点では、大きなシナジーを感じさせてくれます。
――Qoo10のようなECとTikTokは相性が良いということでしょうか?
モラーノ:EC業態は、お客様の顔を実際に見ることができません。居住地や年齢はデータベース上でわかりますが、実際にどんな人が商品を購入し、どんな買い物、購入後の体験をしたのかをこれまで知ることはできませんでした。しかし、TikTokはお客様の発案土壌があるプラットフォームとして利用されているため、お客様の積極的な投稿で顔が見えます。
このように、お客様の解像度を上げてくれるのはTikTokならではの価値だと思います。ECサービスを提供する側として、お客様との距離を縮められたことからも、EC業態とTikTokとの相性はよいと言えるのではないでしょうか。
千秋:日頃のコンテンツ消費のなか、「たまたま誰かが等身大で『話題・体験フォーカス(Look at it)』しているコンテンツ」に出会えるのが、TikTokです。また、最近公開した「ショッパーテインメント白書2024」でも明らかになりましたが、そこで接触するエンターテインメント性のあるコンテンツが誰かの購買行動につながり、その人がまた投稿するという循環が生まれています。そういう点でも、TikTokはECと相性のよいプラットフォームだと言えます。
――認知を中心とした施策だけではなく、フルファネルでTikTokを活用する余地はあるのでしょうか?
モラーノ:弊社でいえば、たとえばアプリをインストールしていただく施策も検討中です。インストールする前の体験がポジティブであれば、購入行動に繋がりやすく、長く利用いただく可能性が増えます。TikTokなら、それができると考えています。 今後、お客様の反応をみながら、ボトムオブファネルはもちろん、ミドルオブファネルの施策も行えればと思います。
千秋:今回の取り組みをふまえてもっとも重要なポイントは、eBay Japan様の継続的な出稿で次のセールの際にユーザーに「メガ割り」を想起させ、クリエイターによる新たな投稿で購買を後押しするようなサイクルができたというところです。「ユーザーがつくるコンテンツから波及する効果」は、TikTokで強化できる部分。それが、フルファネルでの活用も後押ししてくれると考えています。
Written by DIGIDAY Brand STUDIO(島田ゆかり)
Photo by 渡部幸和
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