デパコスでも“TikTok売れ” 「シュウ ウエムラ」のプロモーション戦略とは
昨年11月、メイクアップアーティストブランド「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」はアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」の第6部「ストーンオーシャン」とコラボレーションした2023年ホリデーコレクションを発売した。
キャラクタープリントが施されたパッケージやマーブル柄のテクスチャーといった商品の魅力、そして遊び心あふれる世界観を発信し、ファン獲得を支えたのはTikTokを採用したプロモーション戦略だ。TikTokといえば若年層向けのプラットフォームと思われがちだが、「シュウ ウエムラ」のようなデパコスにおいても成果を獲得した。
ブランドとプラットフォーム双方の視点から、本キャンペーンの背景と成功の秘訣を聞いた。
※このインタビューはWWDJAPANにて2024年4月22日に広告掲載したものです。
左から
ビン・ジェローム・ジョウ / 日本ロレアル ロレアル リュクス事業本部「シュウ ウエムラ」事業部 ブランドイメージ&エンゲージメントマネージャー
杉本芳兒 / 同ソーシャルPRマネージャー
南野穂乃花 / TikTok for Business Japanグローバルビジネスソリューションズ クライアントパートナー
佐藤ノア優 / 同グローバルビジネスソリューションズ クライアントパートナー
なぜ、今「プロモーションはTikTok」なのか 「シュウ ウエムラ」が選んだ理由
「ジョジョの奇妙な冒険」とコラボレーションした2023年ホリデーコレクション
WWD:本キャンペーンの取り組みとしてTikTokを取り入れた理由とは?
ビン・ジェローム・ジョウ 日本ロレアル ロレアル リュクス事業本部「シュウ ウエムラ」事業部 ブランドイメージ&エンゲージメントマネージャー(以下、ジェローム):このキャンペーンにTikTokを選んだ目的は2つ。第1に認知度を拡大し、エンゲージメントを得ること。このユニークなコラボレーションを広く拡散したかった。第2に、TikTokというプラットフォームについてもっと学びたかったことも挙げられる。そこで私たちはTikTok for Businessのチームと相談する中で、認知を最大化し、より深く掘り下げて購入を検討するきっかけとなるようなフルファネル戦略によって、今回の目的を達成できるのではないかと考えた。何より、TikTokにおけるコンテンツの表現力はとてもユニークで幅広い。この表現力こそ、私たちがメイクアップの分野で行っていることであり、TikTokと非常にマッチしていると感じた。
杉本芳兒 同ソーシャルPRマネージャー(以下、杉本):まさしく、プラットフォーム自体が自己表現の場として使用されていて、表現力に長けたクリエイターがたくさんいる。 “すべての人が、内側に秘めた可能性を解き放ち輝けるよう、自己探求・表現する力を与える”というブランドミッションを掲げる「シュウ ウエムラ」にとって、とても親和性が高いプラットフォームだ。
WWD:ビューティアイテムとTikTokプロモーションの相性について、どう捉える?
南野穂乃花 TikTok for Business Japan グローバルビジネスソリューションズ クライアントパートナー(以下、南野):今回のコラボレーションアイテムを使って、まさに“トランスフォーメーション(変化)”できるというクリエイターの動画表現は、今取り組みの中でも非常に強い影響力を持った。没入感のある視聴体験で世界観を共有できるからこそ、視聴者も抽象的な印象だけで終わらず、メイクアップした自分自身を具体的に想像できる。そういった点においても、TikTokというプラットフォームはビューティ商材と相性が良いと言えるだろう。
佐藤ノア優 同グローバルビジネスソリューションズ クライアントパートナー(以下、佐藤):TikTokのユーザーは若年層だけではなく、最近はより幅広い年齢層に拡大し、美容に関心があるユーザーが多いプラットフォームでもある。様々な表現方法を持つクリエイターやブランドのアセットが受け入れられるプラットフォームとしての土壌があるため多角的な層へのアプローチを可能にし、美容商材のプロモーションにも効果を発揮する。
段階的なコンテンツ発信で認知度拡大から購入検討へ
WWD:“認知拡大”から“購入検討”を促すまでの取り組みとなったが、このようなプランニングはどのように行った?
ジェローム:先述した通り、今回のプロモーションではプラットフォームを効果的に活用するためのカギを見つけることも目的だった。TikTok for Businessのチームとゼロベースでディスカッションを重ね、フルファネル戦略にたどり着いたことに感謝している。この戦略により、商品のことを知ってもらい、より理解を深め、ECサイトへアクセスし、実際に購入したいという気持ちになるような仕組みを醸成することができた。
まず検討したのは、「どのようにしてコンテンツを視聴者に最適化するか」ということ、そして私たちのコンテンツを見た一般ユーザーも自身でコンテンツを作るきっかけになるようなクリエイティブにするための方法だ。それらがかなうことにより、認知度の最大化を測れると考えた。そのため、「シュウ ウエムラ」のブランドクリエイティブをTikTokライクに編集したコンテンツに加え、クリエイターともコラボレーションして魅力的なアセットを作成した。認知度最大化のために、全体を見通した取り組みを計画した。
佐藤:昨年夏、ブランドがどのようにTikTokを活用できるかを示すワークショップを開催した。この際にTikTokならではのさまざまなソリューションを組み合わせることで、より効果的なアプローチができることを伝え、実際にどんなプランニングができるかを共に考えるきっかけとなった。
南野:プロモーション自体はホリデーだったが、夏頃からプランの相談をし始めたことで、われわれにとってもブランドに対する理解が深まり、その上でTikTokをどのように活用すべきか提案した。その中で“コラボレーションの魅力的な世界観を伝えていくこと”“見ている人が自分ごと化できるようなリアルさ“の2つの軸を持つことが重要だと考え、全体的なプランニングにも反映している。認知に効果的なトップビューや、インフィード広告を組み合わせながら、ティザー期間ではブランドの動画のみでワクワク感を作り、先行発売から本発売の期間にはブランド動画とクリエイター動画を活用し山場を生むなど、プランニングする時点でどの時期にどういった層をつかんでいくかというストーリーラインを描いた。
杉本:単にプラットフォームがあって、プランだけを購入して実施するようなプロモーションではなく、初期の段階から共にストーリーを描くことができた。真の意味でのコラボレーションであり、良き成功例になったと感じている。
佐藤:また、TikTok for Businessの広告クリエイティブの制作をサポートする“TikTok Creative Exchange(TTCX)”では、ブランドが持つ動画をよりTikTokに最適化するための無料カスタマイズを行う。今回のように複数パターンの動画を準備するなど、一貫してサポートができたことも、良い結果に導くことができた理由の1つだろう。
ブランドの価値を体現するクリエイティブ
左から、ブランド素材を活用した動画広告、TikTokクリエイター・おおしま兄妹の投稿動画
「シュウ・ウエムラ × ジョジョの奇妙な冒険」コレクションアイテム
WWD:クリエイターの選出やコンテンツ制作はどのように行った?
ジェローム:「シュウ ウエムラ」としてまず重視したのは、クリエイターとブランドの世界観の親和性だ。そしてクリエイターが私たちのブランド価値――杉本が語ったように、“自己探求”や“自己表現”を体現しているかどうかを重視した。これにより、とても素晴らしいメイクアップのトランスフォーメーションを披露することができた。クリエイターの中には、非常に変幻自在なメイクアップを得意としていることでブランドとの関連性が高い人もいれば、メイクアップに関してより専門的な知識を持つ人もいる。
南野:ジェローム氏が言うように、ブランドの世界観を担い、“世界観”と“使い方”の双方のパネルを表現するクリエイター選定が良い結果を生んだ。今回は4組のクリエイターを起用し、2組はブランドの世界観を表現する動画を、もう2組はメイクの“How-to動画”を制作してもらい、私たちからもプラットフォームに合うようなクリエイティブ制作の提案を行った。
WWD:TikTok for Businessとして、クリエイティブ制作に関するアドバイスやサポートがあれば教えてほしい
佐藤:最も重要な点は目的を明確に定め、その目的に沿ったコンテンツを制作することだ。認知拡大のためには話題化につながるコンテンツを、商品の理解につなげるためには“How-to動画”を作るなど、目的が明確だからこそコンテンツの企画やクリエイターの選定へとつながる。加えて、クリエイター自身の良さを理解することも大切だ。われわれやブランド側がクリエイターをコントロールし過ぎてしまうと、その人の良さが生かせなくなってしまう。「シュウ ウエムラ」のチームもこのバランスをよく理解していたため、魅力的なコンテンツが生まれた。
南野:また「TikTokらしい動画がないとプロモーション活用できないのでは」と思われる人も多いが決してそうではなく、“TTCX”のようなわれわれのサービスを活用し、よりTikTokユーザー向けに最適化することも可能だ。クリエイターとコラボレーションができなくても、ほかの方法で実現できることはある。TikTok for Businessはさまざまなソリューションを備えているため、気軽に相談してほしい。
マーケティング調査が示す高いエンゲージメント獲得
WWD:今回のキャンペーン効果をどのように受け止めている?
佐藤:カンター・ジャパン社の調査によると、広告認知は+9.5pt、ブランド好意度は+7.4pt、購入意向は+13.3ptという結果になった。これは、認知した後にその商品や世界観のファンになり、購入したいという態度変容が実施できたという点で、キャンペーンとして良い結果だったと言える。また、ブランド名を含む視聴数、検索数、エンゲージメント数がプロモーション実施後に上がった。キャンペーンが終わった後も引き続き、実際に商品を購入したユーザーからUGC(User Generated Content=一般ユーザーにより作られるコンテンツ)が投稿され続けている。これらの結果から興味関⼼の獲得に成功したことが伺える。
ジェローム:リーチだけでなく、エンゲージメントにおいても素晴らしい結果を得ることができた。TikTok for Business調査によれば、プロモーションをローンチした昨年10月には、TikTokにおいて「シュウ ウエムラ」関連の国内視聴数が、ベンチマークとしてピックアップしたデパコスブランド10社と比べ最も高かった。そして、「TikTokを観て買った」「すてきな色味で欲しくなる」と言ったコメントから、ユーザーのポジティブなエネルギーを感じることができた。さらに認知度、リーチ、エンゲージメントやUGCのほか、ECサイトへのトラフィックでも効果を実感できた。つまりECチャンネルで商品を調べるまでに、視聴者の興味・関心を引きつけることに成功したということだ。これらの結果、TikTokのキャンペーンは売上にも寄与し、ホリデーコレクション全体の売上は前年比超えを達成することができた。
南野:リーチ数が獲得できたのはもちろん、熱いファンダムを構築し、実際の購入サイトへと誘導できた。今回は認知からのインパクトを重視したキャンペーンだったが、今後はよりインサイトを高めていくためのコミュニケーションを「シュウ ウエムラ」と行っていきたい。また「シュウ ウエムラ」のようなデパコス商品でも実績を出せたことで、ラグジュアリーブランドにおいてもTikTokでのプロモーションが有効だと言える1つの成功事例となった。「シュウ ウエムラ」とは、こうしたアプローチを共に実現できた先進的なパートナーとして、今後も関係値を築きながらチャレンジの姿勢を続けていきたい。
ジェローム:今回のような循環をTikTokで構築し続けることは、われわれにとっての今後の目標の1つである。キャンペーンごとに目的は異なるが、そのたびに新たな戦略やファネルを活用することに意欲的だ。今後も、新商品“ブラック クレンジング オイル”のTikTokプロモーションを実施しようとしているほか、さまざまなプロジェクトが続く予定だ。ホリデーのキャンペーンから学んだことをうまく応用し、成長していきたいと考えている。
PRODUCED BY WWDJAPAN
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