日産がTikTokで好意度上昇 “クルマ離れ”越えて未来の顧客づくり

2024-07-04

日産自動車が若年層向けに配信したTikTok動画がヒットし、クルマのような高額の耐久消費財でもブランディング効果があることがわかった。

2023年12月に配信した動画で、接触者の広告認知率が、非接触者に比べて36.9%高い結果となった。広告の6秒視聴率も平均を上回った。

 

※このインタビューはAdverTimes.にて2024年6月27日に広告掲載したものです。

日産がTikTokで好意度上昇 “クルマ離れ”越えて未来の顧客づくり

日産自動車 日本マーケティング本部ブランド&メディア戦略部の塚原幹也氏は「ブランドハッシュタグの投稿数推移を見ても、昨年1年間で約2倍伸びており、クルマとTikTokは非常に相性が良く、機会があると考えている」と話す。
※TikTok for Business調べ。

配信したのは、人気4人組バンド「DISH//」とのコラボレーション施策【Drive Letter】から生まれた、没入型ドライブムービーだ。最大の特徴は、「音」。360°audioを活用し、まるで「DISH//」のメンバーと同じ車内にいるような雰囲気。バンドのボーカルを務める北村匠海さんの歌声をその場で聞いているかのような体験が味わえる。スマートフォン向けのタテ型動画であることはもちろん、いわゆる“自撮り”のような風合いで、よりTikTokに最適化した動画に仕上げた。

画像をクリックするとTikTok動画にアクセスできます
(外部サイトが開きます。視聴期限:〜2024/11/28)

 

動画は、ユーザーがTikTokアプリを開いた際、最初に表示される「TopView」のほか、運用型広告で配信。成果について施策を担当したTBWA\HAKUHODO プランナーの木村賢吾氏は、「エンゲージメント率やブランドリフトが上がることは想定していたが、日産自動車のWebサイトへの来訪率が平均値の2倍以上になり、ブランドに好意を持ってくれた若年層をはじめとする多くの方がWebサイトまで来てくれることは非常に大きな発見でした」と話す。

「若者のクルマ離れと言われていますが、調査をしてみると、若年層はクルマを嫌いなわけではありません」と話すのは日産自動車の塚原氏。

「実はクルマへの興味関心はあり、TikTok上でもクルマの情報収集をしているユーザーは非常に多かったのです。車種訴求としてもTikTokを活用しているのですが、『プロパイロット パーキング機能って便利だよね!』といった声や、EVについての会話などもあり、ユーザー同士のコミュニケーションも取られています。クルマの良さ、ブランドへの好意度を高めながら、クルマのある生活を想像してもらうことで、未認知層から実際の購買層にまで一貫して届けられるのではないかと考えています」(塚原氏)

日産自動車の塚原幹也氏

企画制作も若手で構成

企画の目的は、若年層=Z世代を中心に、日産自動車のブランド好意度を高めることだ。「『他のやらぬことを、やる』という日産自動車のDNAを伝えること。常に新しいことに挑戦しているというブランドイメージを確立していかなければなりません」と塚原氏。

「特に、若い世代が今後、クルマを購入するライフステージに立ったとき、日産を選んでもらえるようにすること。現代の若年層には実家でEVを保有している『EVネイティブ』も少なくないので、電気自動車、自動運転と言えばNISSANという、トップオブマインドを取っていきたい」(塚原氏)

こうした狙いに応えるべく、TBWA\HAKUHODOの関谷氏は、「TBWA\HAKUHODOを中心とした企画制作チームは、26〜27歳をメインに若手メンバーで構成しました。博報堂DYグループのリサーチ部署と共同でZ世代の価値観や情報接触行動、社会性などを調査し、企画にも盛り込みました。」と話す。

「日産自動車が大切にする“生活者視点で生活者に寄り添ったコミュニケーション”で、エンターテインメントコンテンツを提供することで、彼らの心を動かしていくことを目指しました。」(関谷氏)

左からTBWA\HAKUHODOの木村賢吾氏、関谷俊博氏、望月瑠海氏、鶴田壮太郎氏

 

「Z世代の心に徹底的に寄り添おう、と考えました」と話すのは、TBWA\HAKUHODOコピーライターの望月瑠海氏だ。

「気を配ったのは『広告とはこういうもの』という先入観を排除することです。広告として制作してしまうと若年層には届かず、スキップされてしまいます。コンテンツとして日産自動車のメッセージを届けることを意識しました」(望月氏)

ユーザーを楽しませるコンテンツであることと、ブランド好意度の向上をどう結合させるか。実は動画クリエイティブの端々にその工夫が見られる。TikTok for Business Japanのボンクジョビペレ氏が指摘するのは、動画の再生が始まってすぐ、ユーザーの興味をつかむ仕掛けだ。

「(北村匠海さんが)『この動画はイヤホンをつけて見てくださいね』とユーザーに呼びかけています。そこでユーザーは、『イヤホンをつけるとどうなるんだろう?』と興味が湧きます。そして、期待を上回るような360°audioによる聴覚の体験があって、ユーザーが動画に引き込まれていくような仕掛けになっています」(ペレ氏)

TikTok for Business Japanのボンクジョビ ペレ氏

 

実際、「TopView」における6秒視聴率(=再生開始から6秒間の視聴率)は、平均値に対して2.4ポイント高い8.7%。運用型広告で配信した分については、平均値よりも7ポイント以上高い、13.4%となった。

ペレ氏がもう一つ指摘するのは、「ビハインド・ザ・シーン(=舞台裏、メイキング)」のような趣を持った撮影方法だ。「ネイティブのTikTokコンテンツと変わらない雰囲気を持っています。これはTikTokの中で現在人気のコンテンツに共通するポイントのひとつです。『DISH//』のメンバーがオーガニックに投稿したかのような雰囲気で、ユーザーによりよく受け入れられたのではないかと思います」(ペレ氏)

 

実際、動画はとことん生のファーストリアクションを収めることにこだわっており、3テイクしか撮っていないという。

「いかにも送り手から押し付けているような“圧力”のようなものをなくしながら、日産としてのブランドを感じてもらうかがカギだったと思います」と話すのは、TBWA\HAKUHODO アカウントエグゼクティブの鶴田壮太郎氏だ。

「360°audioは、体験としての面白さ、北村さんの歌声もさることながら、まるでメンバーとクルマに同乗しているかのような雰囲気を味わえるものになっています。クルマの広告というと、どうしても外観に目が向いてしまうところ、乗ることの楽しさを感じられるものにできたのがよかったのだと思います。その上での成果として、この動画を見た結果、Webサイト訪問という行動につなげることができたのは、うれしい驚きでした」(鶴田氏)

ユーザーに寄り添ってエンタメ化

日産自動車の塚原氏が「想定以上だった」と振り返る今回のTikTok動画施策。「得られた知見は、今後のクリエイティブにも活かしていきたいと思う」と同氏は話す。

木村氏が、「当然のことのようですが、やはり改めて大事だとわかった」と話すのが、「ユーザーに寄り添ってコンテンツを制作すること、そして、プラットフォームに最適なクリエイティブを用意すること」だ。

「シンプルですが、非常に重要なことではないかと思います。特にTikTokはより情報が届きやすい、カルチャーの中心に位置するプラットフォーム。きちんとプラットフォームに合わせること、そして、広告をエンターテインメントに仕上げること、ユーザーに楽しんでもらって、ブランドを体験してもらうことが大切だと実感する企画でした」(木村氏)

「商品を広告しているのではなく、人生を広告している、という感覚がありました」と話すのは望月氏だ。クルマそのものではなく、クルマがある生活を描く――「商品そのものを説明するより、その商品がある世界を描くほうが、若年層に届くということを学べたと思います。TikTokは今後、マス広告よりも見られるものになるかもしれません。クリエイターにとっても、TikTokを活用した企画は一層重要になるのではないでしょうか」(望月氏)

 

制作:宣伝会議 AdverTimes.編集部

 

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