TikTokフルファネル施策で『TikTok売れ』を見事に巻き起こした「Fit me」のTikTok活用法
(published by アドタイ)
メイベリン ニューヨークのリキッドファンデーション「Fit me(フィットミー)」は2021年6月22日から7月17日にかけ、断続的に「TikTok」を活用し、認知度獲得から購買意向の醸成まで、いわゆるフルファネル型のマーケティングを実施した。ブランド認知度はBLS(ブランドリフト調査)で33%増。売り上げにも寄与し、施策実施の前後2週間で比較して二桁成長を見せ、7月の売り上げは、過去最高を記録した。その内幕をメイベリンニューヨークのブランド担当者らに聞く。
100%デジタルで完結
メイベリン ニューヨークのリキッドファンデーション「Fit me(フィットミー)」は昨年に刷新(リイノベーション)した製品だ。自分の肌色に合った色を選べるよう、全※17色で展開している。しかし、大きな障壁となったのが、新型コロナウイルス感染症の拡大だった。自分の肌色と比べるための大きな助けとなるテスターが、感染防止のために使えない。そこで大きな決断を下すことにした。
メイベリン ニューヨークのリキッドファンデーション「Fit me(フィットミー)」
「2021年については、100%デジタルで完結させよう、ということで大きく戦略を変えました」と話すのは、コンシューマー プロダクツ事業本部デジタルトランスフォーメーション統括を務める高瀬 絵理氏だ。
「Fit me」のカテゴリーであるリキッドファンデーションは季節の変わり目がひとつの需要時期である。幅広いコスメ関心層がターゲットだが、従来はテレビCMで認知度獲得を図り、店頭へつなげていくのが定石だった。デジタルはその中間を担うメディアだった。
コンシューマー プロダクツ事業本部デジタルトランスフォーメーション統括の高瀬絵理氏
「デジタルメディアでも認知を獲得できるメディアはいくつかありますが、いかに『Fit me』への興味を引き上げながら消費者の方々へ届けるかを考えると、『TikTok』が適切だという結論に至りました。『TikTok』は一方的なコミュニケーションではなく、ユーザーから発信、そしてユーザー同士での会話が盛んな点が特徴です。ファンデーションは特に商品への信頼感が重要なカテゴリーなので、企業からの一方的な発信ではなく、消費者の会話の中に多く登場することが重要だと考えました」(高瀬氏)
TikTok For Businessの南部 歩氏は「ロレアルさま、ならびにメイベリン ニューヨークはかなり早い段階から『TikTok』に着目され、ここ2年ほど、一緒にチャレンジをしていただいています。まだ『TikTok』をマーケティングに活用するのが当たり前ではなかったころから、活用の仕方を見出し、ラーニングを貯めていくことができました。今回の施策はTikTokをメインに認知から購買までフルファネルでの実施となるので、非常に感慨深いです」と話す。
「TikTok」とそのほかのメディアとの違いについて、高瀬氏はさらに言葉をつなぐ。
「プラットフォームとしての特性として、ユーザーが何か新しいものを探しに訪れている、という点が挙げられると思います。いわゆるフォローしているインフルエンサーの投稿だけを見に来ているわけではない、というふうに感じます。仮に『Fit me』について検索していなかったとしても、新しいブランドの動画という点で興味を持ってもらえますし、ほかのユーザーのコメントが接点になる、ということも少なくありません」(高瀬氏)
TopViewで話題を喚起
今回の施策の目玉となったのは、「TikTok」のスマートフォンアプリを起動した直後に表示され、ユーザーが最初に目にする動画広告「TopView」の活用だ。1日1社限定(現在は1日最大2社)で使用できる枠で、15秒から最大60秒までの音声付き動画広告を流せる。3秒以上視聴すると、シームレスにフィードに入り、残りの動画が表示される。いずれもスキップすることは可能。
この「TopView」では、アジアにおける「Fit me」のグローバルアンバサダーとして、人気K-Popグループの「ITZY」起用の動画を活用。他のメディアよりも早く「TikTok」で告知することで、ニュースバリューを持たせたことが奏功、「配信後、数十分で非常に多くのコメントや『いいね』がつきました」と高瀬氏は振り返る。結果的に1500万ビュー、5万4000いいね、750件のコメント、1400件のシェアを記録した。
「とてもコメントの熱量の高さを感じました」と話すのは、同じくメイベリン ニューヨークの「Fit me」製品担当の松田遥香氏だ。
メイベリン ニューヨークの「Fit me」製品担当の松田遥香氏
「広告への好意度も高く、(広告動画を)『リプレイして見たい』であるとか、『(TikTokで流れる広告が)全部これがいい』といった内容が散見されました。さらには、ブランドへの反応だけでなく、製品についてもコメントしてくれるユーザーが少なくありませんでした。『気になっていたけどどうなんだろう』というコメントに対して、『崩れにくくていいよ』というふうに、ユーザー同士での会話が生まれていたことは、とてもうれしく思いました」(松田氏)
コラボ投稿は広告っぽさを消す
重ねてTikTokクリエイターとのコラボレーション投稿も実施。「当社自体、『TikTok』をグローバルで活用しているので、手法についても一定の蓄積があります。インフルエンサー施策もそれを汲んでおり、(TopViewでの)動画を見たあとに、理解を促す施策を打つ、という考えの下、実施しています。その上でインフルエンサー施策は信頼醸成が重要。ブランドが伝えたいことは2、3割に絞り、インフルエンサーさんの言葉で製品について語っていただくことが、ファンに寄り添い、信頼していただくために不可欠だと考えています」(高瀬氏)
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「ユーザーがどう受け止めるかを極めて重視しました」と松田氏も言葉をつなぐ。
「当然ですが、いかに有力なインフルエンサーを起用しても、あまりにも広告臭が強いコンテンツは受け入れられません。ユーザーは率直ですし、シビアに見ていらっしゃるのだと思います。今回の動画では、元々起用したクリエイターがふだん投稿している動画に近しい内容を意識しました。TikTok For Businessの皆さんにもコンテンツを共に考えていただいていて。たとえば動画の最初から製品を登場させるのではなく、自然な流れで製品が取り上げられる、といったことです」(松田氏)
起用したTikTokクリエイターは役割を設け、話題化が得意なセロウンブログ【ウナとりゅう】さん、コスメの知識が深く、説明が上手なKevin(ケヴィン)さんをアサインした。
「(TopViewでITZYが登場する)キービジュアルを用い、まずは認知を向上させる。次にクリエイターを活用しながらブランドを認知し興味を持ってくれた方の理解を深める、というふうに、施策期間内でファネルにしたがってアプローチを進めることで、成果につなげることができたのではないかと考えています」(南部氏)
デジタル施策への理解も
フタを開けてみると、「TopView」を起点として向上を図った認知度は、ブランドリフト調査で33%増。さらに売り上げにも寄与し、TopView出稿の前後2週間を比較して1.3倍もの成長を果たした。さらに7月第3週に再度TopViewを出稿。今度は「店頭で見つけてね」といったメッセージに変更して実施した。店頭でも数千店舗規模で、ITZYが登場するビジュアルを掲出。売り場での再想起を図った。
「社会がコロナ禍に見舞われているさなか、売れている製品はデジタルメディアで大きく話題になっているものだ、とお考えになっているケースは珍しくないと思います。特に、『Fit me』は、デジタルに親和性の高い世代をターゲットとしていますので、効率よく伝えたい方々に伝えようと思えば、自然とデジタルメディアを選ぶことになります。実際今回のTopView実施後、小売さま側からの反応があったりと、TopView実施による小売さま側からの注目にも驚きました」(高瀬氏)
メディア費用をデジタル100%に――2021年、大胆な方針転換を行ったメイベリン ニューヨークの「Fit me」は、見事その賭けに勝つことができたと言えそうだ。
では、次はどうするか、と尋ねると、高瀬氏からは、「今回で売上への寄与も見られ、大きなラーニングもあったため、今後も『TikTok』は活用していきたいと思います。コンテンツの出し方はまた、新たな工夫が必要かもしれません」との答えが返ってきた。
「より自然にユーザーに寄り添うという点では、根本的な方針は変わりません。ただ、その表現形式は変わっていくのではないでしょうか。特に『TikTok』は、流行するコンテンツのあり方が日進月歩移ろっていきます。むしろ、そうした変化に敏感な人たちこそが好んで接しているメディアです。いままでと同じことをやっても古く見えてしまう恐れはあります。変化をうまくとらえて、また新しい手法で成果を挙げていきたいと考えています」(高瀬氏)
「『TikTok』自体もどんどん進化しています」と話すのは南部氏。
TikTok For Businessの南部 歩氏
「投稿できる動画も3分以内となったり、ライブ配信もできるようになったり、ユーザーがものすごい勢いで増えていたり。そういったサービスとしての進化もですが、グローバルの知見を生かしながら広告機能も続々とローンチされています。今回はTopView、クリエイター活用インフィード、TopViewと段階を分けてフルファネルで実施いただきましたが、TopView単体で見ても、認知だけでなく、エンゲージメントも生まれたり、クリエイターインフィードでは購買意向がしっかりとリフトしたり、TikTokならではの特徴が現れていました。『TikTok』自体の進化に応じて、ユーザーをより巻き込めるような、新しいスキームの開発にも挑んでいきたいです」(南部氏)
制作:宣伝会議 AdverTimes.編集部
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