TikTokとTVCMの連動プロモーションを展開したauの狙い
CM好感度調査で常に上位に入るなど、人々に愛されるCMを発信するKDDI(au)。
なかでも人気が高いのは「三太郎」シリーズだろう。
2023年の年始の特別CMでは、シリーズ開始9年で初めてTikTokで人気を集めるクリエイターを起用。テレビとTikTokを横断するコミュニケーションを展開し、TikTokでの関連動画の再生数が1億回を突破する成功を収めている。
その狙いは何か?戦略の裏側に迫る。KDDIの樋野成美氏と山口星氏、電通デジタルの田口優衣氏、電通PRコンサルティングの山崎珠里氏、そしてTikTok for Businessの柏谷愛都沙氏に話を聞いた。
松田翔太、桐谷健太、濱田岳ら人気俳優が昔話のキャラクターに扮(ふん)するauのCM「三太郎」シリーズ。同ブランドでは、年始に放送される特別版CMを毎年制作している。今年放送された「ココロ、オドルほうで。」篇は、KOTARO IDE(PPP STUDIO所属)、ローカルカンピオーネ、中野亜紀、@小豆というTikTokで活躍する4組のクリエイターが出演し、桃太郎・浦島太郎・金太郎といったレギュラー陣とともにCMに出演。TikTokクリエイターのテレビCM起用は初の試みだ。楽曲もTikTokを起点に有名になったアーティストが担当しCMを盛り上げている。
樋野成美(以下、樋野):auをお客様にとって身近な存在と感じていただくことを目的に、コミュニケーションに取り組んでいますが、今はたくさんの情報の中から、ユーザーがそれぞれ興味のあるものを探して取りに行くのが主流。昨今は若年を中心に通信キャリアに対する関心が薄まってきており、いくら企業から発信しても興味がない情報は受け取られなくなっています。そこで、若年の皆さんに興味を持ってもらう為、テレビCMとデジタルの連動、特に若年層へのアプローチとしてTikTokに軸足を置きました。
樋野成美氏 / KDDI ブランド・コミュニケーション本部 コミュニケーションデザイン部 IMC推進室 戦略G
山口星(以下、山口):auでは毎年1月1日に「三太郎」のテレビCMを放映しています。お正月という、家族や友人が集まって顔を合わせることが多い特別なタイミングに、三太郎から前向きなメッセージを発信することで、auのファンを増やすことを目的として継続して実施しています。今年のCMメッセージは「ココロ、オドルほうで。」 です。人生は選択の連続、いろいろな選択に悩んだときに、『ココロオドル』ことを自ら選択していこうという意味が込められています。このメッセージを一方的に発信するだけではなく、TikTokを活用して、参加型にすることでより多くの皆様にお届けしたいと考えました。その中で双方向のコミュニケーションとして今回の構想が生まれました。
山口星氏 / KDDI ブランド・コミュニケーション本部 コミュニケーションデザイン部 クリエイティブ企画G
田口優衣(以下、田口):親しい人が集うお正月に、前向きになれるメッセージを発信して注目を集め、さらに多くの人を巻き込んで話題化する。そのため、拡散性と参加性の高いプラットフォームであるTikTokをデジタル施策の中心としたテレビCM連動キャンペーンを提案しました。
田口優衣氏 / 電通デジタル ソーシャルメディアエクスペリエンス部門プランニング第1事業部 コミュニケーションプランナー
今回のキャンペーンを実施するにあたり、ティザー期、ローンチ期、サステイン期という大きく3つの期間を設定。テレビCM放送だけの一方的な発信ではなく、TikTokコミュニティを巻き込むような仕掛け作りを意識し、それぞれの期間にはTikTok上でも様々な施策を展開した。
山口:今回は22年12月28日からティザー期を設定しました。ここでは、企業名やCMに出演すること、楽曲のアーティストや曲名を伏せたまま、連日リレー形式でそれぞれのアカウントから投稿していただきました。
クリエイター起点で発信してもらい、「これから何か始まるぞ」という期待感の創出・醸成を図りました。そして1月1日からはローンチ期としてコミュニケーションの出力を最大化。テレビCMの放送と共に、TikTokでは4組が全員出演する動画をリーチ拡大を目的に「TopView」*1で実施、また各クリエイターアカウントではCMセットと衣装で動画を投稿し、三太郎CMに出演した事実を明かし、CM公開と合わせた話題化を図りました。また、今回の企画の特徴を活かしたお客様参加型の施策として「ハッシュタグチャレンジ」*2も同時展開しました。
サステイン期では、その盛り上がりを引継ぎ、ファミリー層やペット好き層などを巻き込んでより多くの層へ届ける事を目指しました。
*1: TopView
ユーザーがアプリを起動するとフルスクリーン/サウンドONで表示されるプレミアムな広告。1日でTikTokユーザーに最大級のリーチができる。
*2: ハッシュタグチャレンジ
ユーザーが特定のテーマに沿って動画を投稿し、トレンドを作り上げるためのTikTok広告メニュー。現在は「ブランドミッション」のパッケージの中で利用可能。
山崎珠里(以下、山崎):クリエイターさんのキャスティングを担当させていただいたのですが、一番のポイントは、フォロワーが重なっていない方をアサインした点です。ひとつの同じジャンルの中でも、TikTokには本当にたくさんのクリエイターさんがいらっしゃいます。サステイン期はさらに起用したクリエイターのジャンルを広げ、より多くのユーザーに届くように拡散を広げていきました。
山崎珠里氏 / 電通PRコンサルティング 総合コミュニケーション局デジタルアクティベーション部 兼 コミュニケーションデザイン部 プランナー
キャンペーンを3期に分け、話題の最大化と継続を実現させた結果「#ココロオドルほうで」の動画再生数はTikTokで23年上半期再生数国内1位となる1億1000万回を突破(23年1月~7月18日集計)。さらに、広告認知の面でも大きな成果があった。
柏谷愛都沙(以下、柏谷):ブランドリフト調査で、ハッシュタグチャレンジに接触したユーザーと接触していないユーザーでの広告認知や好意度の差分を取ったところ、広告認知が+15.4%、キャンペーン参加意向が+6.0%との結果がでました。これは、広告認知は平均の8.5倍、参加意向も1.7倍というものすごい数字です。
柏谷愛都沙氏 / TikTok for Business Global Business Solutions, Japan Strategic Accounts Tech Telco Client Partner
大きな成功を収めた要因には、テレビCMやTikTokなど複数プラットフォームの多重接触を実現したこと、テレビCMの企画段階からTikTokでの展開を考えたこと、プラットフォームやジャンルを超えたキャスティングにトライしたことが挙げられる。
田口:現状、CMとデジタル施策はかけ離れてしまうケースが一般的です。CMはタレント、デジタルはTikTokクリエイターが立つので、テレビCMとデジタルが同じものだと認識をされにくい印象があります。その点、今回はテレビCMで見た人が、TikTokのTopViewにも出ているので相乗効果が生まれました。クリエイティブの内容をTikTokに寄せることをKDDIさんが許容していただいたことも大きかったですね。
山崎:クリエイターさんが投稿したティザー期とローンチ期の動画は、CMセットの中でそれぞれ自由に撮っていただいたんです。
柏谷:起用されたクリエイターさんの動画や広告のコメント欄も盛り上がっていました。「テレビCM見ました」「CM出演おめでとうございます」「まさにお正月の夢のようだ」といったように、テレビCMとTikTokコンテンツをシームレスに感じていただけました。そして、コメント欄の盛り上がりはクリエイターさんを中心としているTikTokコミュニティとも繋がることができ、エンゲージメントが深められたと思われます。
樋野:再生数が1億回突破という結果もびっくりしたのですが、コメント数も、今までと比べて多かったんですよね。
山口:4000を超えるコメント数でした。しかも、その6割近くが今回のコミュニケーションで注力している若年層でした。
樋野:TikTokはポジティブで活動的なユーザーが多い。ただコメントをつけるだけでなく、コメント欄のなかで会話が生まれていたり。ユーザーの方にしっかりと刺さる、いいコンテンツができれば、あとは自然に広まるプラットフォームだと感じています。
山口:今回TikTokを活用する中で感じたのは、拡散性と双方向性、そしてユーザーとの距離の近さです。企業として発信するものは、どうしてもお客様からすると距離を感じると思うのですが、クリエイターの皆さんからも発信してもらうことで、親近感や身近さを感じて頂けていると感じました。今後もお客様との距離感を心がけたコミュニケーションに取り組んでいきたいと思います。
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